更新履歴 |
2009,6,31 |
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306話 「大喝采ー!!」 |
2009,6,30 |
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305話 「ノルンの急成長」 |
2009,6,29 |
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ビキニ飛鳥ちゃん |
2009,6,28 |
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晴天の妖精を漫画にして描いてみた |
2009,6,27 |
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304話 「ファイティング・クロス」 |
2009,6,26 |
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303話 「アルトネ陣営 快勝劇!」 |
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| 306話 「大喝采ー!!」 | 2009,6,31 |
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306話 「大喝采ー!!」
うに魔女のアトリエ
〜創世記〜
小波のような優しいオーラの流れをまとい、ノルンは目を瞑っていた。
脳裏にはゼルダリア婆さん、クレインとリイタ、デルサスとマレッタ、そしてアリスと名乗っていたアリエル。
関わってきた人達はどれも自分より凄い人ばかり。
(だけど――――、いずれは越えなければならない壁にゃ)
ノルンは強い決意を宿した眼差しで見開く。
「行くにゃ!!」
自分の背丈より巨大な二つの杖を軽々と振り回し、戦意を漲らせた。
(いつも憧れの人を追いかけていた自分。そうやっていれば楽になれたかもしれないにゃ。でも)
集中力を研ぎ澄まし、凝縮される威力が自分の中で感じる。
(それだけじゃ、あの人達は段々離れて行ってしまうにゃ……)
「最強のレヘルン系アイテム。シャインレヘルン!!」
二つの杖を天に向かって翳す。コロシアムに行き渡るほどの寒気が吹き荒ぶ。
雹が収束され、城ほどの氷山がさかさまの状態で形成される。くり王子は鼻をならし、腕を組んでいる。
ゼルダリアはそんなノルンの練成力に感嘆を漏らす。
「おおおお―――!! 猫娘の癖に最強の氷系アイテムを練成しただとぉ――!!」
叫ぶダグラス。盛り上がって歓声を上げる観客。
(一緒に旅をしてて分かったにゃけど、彼らは常に上を目指そうとしている。だからデルサス達と温度差が生じて寂しくなってきたにゃ。焦ったにゃ。ゼルダリアはそれを予見してて、叱り飛ばしていたにゃー。
それに気付いたのはうに魔女。そしてアリスと出会って見る目が変った時から……。
彼女は本当に凄く強い。何にも言わなくても有無を言わせる力を持っている。これが到達者にゃって。
きっとゼルダリア婆さんはそうなって欲しいと願っていたかもしれないと)
「だからノルンは"到達者"を目指すにゃ!!」
杖を振り下ろしながら、そう宣言――。ゼルダリアは呆気に取られ、何かが胸に込み上げていくのを感じる。
(ノルン……、お主……)
そして観戦席にいたマッキーもその言葉で何処か対抗意識が沸く。組んでいた腕に力が篭る。
ノルンの振り下ろされた杖に従い、氷山は下降を始めた。くり王子は組んでいた腕を解き、身構える。ニヤリと笑む。
氷山は大地を穿ち、割れた。そして水蒸気爆発のように暴風を伴って炸裂する吹雪。木々を凍結し、粉々に吹き飛ばし、積乱雲のように立ち込める氷の霧が更に大気を凍えさせていく。
大地を揺るがし、ありとあらゆるものを巻き込んで砂塵の氷の砂へと変えていく。
光り輝く銀の世界。しかし噴火が巻き起こり、くり王子が飛び上がる。黒き花びらが腕に収束されていた。
「ヤバ……、ああなったら"スーパーS"を発揮してトコトン恐怖の"攻め"になるのォ」
うに姫は身を震わせ、青ざめる。
「ケケケッ、久々に骨のある奴に当たるなんてキングは運がいい」
禍々しく蠢く黒薔薇の花びらが舞い、燃え盛るように腕に纏わり付いた黒き翼が羽ばたく。
「うお――――! 今度はくり王子が三大神業の内一つの……"ウィングギフト"を発現だとぉ――!!」
今度はうに魔女も青ざめる。クレインの事を思い出したらしい。
リリーすら歯が立たずに敵わなかった超絶器用スキル。
「ケケッ、面白そうなネタを仕入れたんでお披露目するか」
指を沸き沸き動かし、黒花弁が収束。栗の形をしたメイスが形成。それを素振り。
その残像がノルンに襲い掛かる。
「ああっ、私のミラージュうにメイスをパクられてる――!!」
うに魔女は絶叫。
ノルンに炸裂し、衝突音が響く。
「フハハハーッ、ずっとキングのターン!! 超必殺技・フォトン・クリセイバァ――――!!!」
今度はココナと全く同じ動きで自身を高速回転させクリメイスを振り回し、あらゆるものを砕き散らしながら、黒き翼が剣となって振り下ろされた。
一気に広範囲の森林を切り散らし、連鎖する衝撃波が激しく吹き荒れた。
「ココナの必殺技勝手に使っちゃダメー!」
ココナが抗議を上げるが、くり王子の耳には入らない。クロアは疲れたような顔でココナの肩に手を置く。
「まだまだキングのターンは終わらなーい!! 毬栗流・鬼ヶ島崩しー!!」
低空飛行しながら地面にメイスを突き立て、弾くように振り上げた。氷岩の破片が飛び散ると共に、その中から数百もの鋭い三日月の剣閃が飛び出す。
雪原を抉り散らし、木々を木っ端微塵に吹き飛ばし、果てに山脈を打ち崩す。
大地を揺るがして巨岩が崩れ落ちていく。
「なん……だと、桃巌流すらもパクれるだと……? しかも僕より威力デカいじゃないかっ!」
観戦していたモモタローは驚愕の声を上げた。
「ケケッ、止めはこれだ――! インパルス・バスターワンクリ!!」
栗メイスを掲げ、尋常じゃないほどの強烈な殺気を孕む。ライナーも飛び出す勢いで上半身を乗り出し、くり王子に釘付けになる。
一刀両断とばかりに振り下ろされたメイスの一撃。銀世界が蜘蛛の巣を生じて一気に捲れ上がり、土砂を巻き上げた。
凄まじいまでの火柱が噴き上げ、驚天動地の天災を呼び寄せたかのような余波が辺りを荒らしまわった。
コロシアム中にも大地の振動が伝わり、観戦客を畏怖させるほどに揺れた。
「……あいつ、俺の技を真似た……だと! しかもオリジナルと遜色ない派生での威力を発揮しやがった」
(剣とメイスとでは全く違うのに……、なんて奴だ)
なおも吹き荒ぶ岩飛礫の嵐。
くり王子は薄ら笑みを浮かべ、見下ろす。
しかしその嵐を風圧が掻き分け、毛玉のようなバリアを纏ったままノルンが威風堂々と姿を現した。
「毛玉バリア形成にゃ!」
ゼルダリアは見開く。二本の杖を振り回しつつ高速回転して丹念に編み込まれた水のマナによるバリアが、毛玉のような形を取っていた。
かつてゼルダリアが風のマナと共に形成していたバリア。
頼りなかった今までの猫娘の記憶像が次々と塗り替えられていくような感覚を覚える。
「な……? こんなバリアでキングの"攻め"を凌いだだと……!?」
流石のくり王子も顔に驚愕の表情が広がる。
「この力一辺倒の必殺技だけでは、ノルンに効かないにゃ!」
荒い息をしながらも負けじとノルンは言い放ち、くり王子は息を呑む。
チャンスとばかりにノルンは双方の杖を振り下ろす。
離れてて当たりもしないのに、動揺していたくり王子は必要以上に飛び退く。しかしノルンは構わず、練っていた源素を解き放つ。
「喰らうにゃ! ノルンの吹雪系アイテムの中で最強のー"氷河石"にゃ――!!」
台風のように吹き荒れる吹雪がくり王子を覆った。
「アイツ……"フロスティク"の上の"北風の贈り物"の更に上のアイテムを練成できる……ですって!?」
アイゼルは僅かに後退り。
(シャインレヘルンといい、氷河石といい、氷系で最強のアイテムを作れるのは稀。
全属性を扱えるうに魔女すら未だに作れない。そしてこの私も"北風の贈り物"までしか――)
微細の氷の針が細胞規模で突き刺さり、壊死と共に削ぎ落としていく効力を持つアイテムの最高峰。その恐怖をくり王子は肌で感じ取った。
「くりあああああああっ!!!」
くり王子は咆哮一喝。核爆発のような高熱の爆発球を解き放つ。
二つの力場が衝突。水蒸気爆発も伴って大爆発が大地を焼き尽くしていく。
余韻が納まり、互いにボロボロ状態で息を切らしながら見据えあう二人。
「なんなの? あのネコ、あの"スーパーS"状態のくり王子と互角にやり合っているじゃん。いたぶってるシーンすら見せずにいるしィ……」
うに姫は唖然と二人を眺める。
(あの状態になったくり王子にはアタシも敵わず、"受け"のまま苛められまくってたのにィ――)
どこと泣く怒りが沸く。拳を震わせ、ノルンに殺気を向ける。
そんな剣幕をよそに二人は再び地を蹴る。くり王子が黒き翼を羽ばたかせば、ノルンは二つの杖を振りかぶる。
「くりああああああああああああッ!!!!!」
「うにゃあああああああああああああ!!!!!」
闘技場は再び強烈な衝撃波がぶつかり合った。
一進一退の攻防を繰り広げる二人の様子にゼルダリアは見上げていた。快く笑む。
「……本当に強くなったな。ノルンや」
傷つきながらもなおも懸命な表情を輝かせて強敵へ挑むノルンに感慨深いものを感じる。涙が溢れた。
切迫した実力者同士の熾烈な競り合い。それも終わりに近づいてきた。
疲労したノルンの身体は既に限界に来ていた。故に反応に鈍くなっていた。その刹那の隙。
「ミラージュ・クリメイススィング!!」
苦し紛れのくり王子が繰り出したメイスの残像がノルンの腹に直撃。吹き飛ばされ、雪原に身を打ちつけた。
「勝負あり!! くり王子の辛勝だ―――――!!!」
ダグラスの勝敗宣言に歓声が沸いた。
勝ったはずのくり王子は苦い顔でノルンを見下ろす。荒い息が収まりそうになく、疲労困憊で顔色は良くなかった。
朦朧する意識を振り払おうと首を振った。
ゼルダリアは倒れたノルンに歩み寄り、抱き上げた。
「ぜ、ゼルダリア婆さん……また負けたにゃ……。ノルンは……やっぱりダ」
悔しくて溜まらず涙を零すノルン。落ち込む彼女の言葉を遮るようにゼルダリアは抱き締めた。
「もうよい。ノルンは充分頑張った。既にお前はワシを越えておるよ……」
「ゼルダリア……」
ノルンも暖かい温もりに綻び、抱き返した。
「今はダメだったが、お主はもっと伸びる。到達者になるのだったら、この気持ちを忘れるでないぞ」
ゼルダリアは感涙する。ノルンもその言葉に安心し、頷く。そして泣き出した。
今まで必死に頑張ってきたとは言え、まだノルンは子供なのだ。
最愛の師に抱きつきながら泣き叫び続ける。観戦客も貰い泣きしていく。
しばらくしてノルンは一人で立てると言い、立ち上がるとゼルダリアは優しい笑みで頷く。
「……これでワシは安心して死ねるよ」
光飛礫がゼルダリアを包み、身体が薄れていく。
ノルンは溢れる涙を拭い、最期まで看取ろうと眼を開いた。
「ノルンや……精進を忘れるでないぞ…………」
「うにゃ、ゼルダリア婆さん。さようならにゃ〜〜〜!」
ノルンは大仰に手を振った。別れの悲しみを抑えきれず涙が溢れる。
ゼルダリアは安心した表情のまま光の飛礫に包まれ、光輪を放つ一つの光球と化し、浮く。
曲線を描き、アリスの羽に吸い込まれていった。
しんみりとした沈黙の場。
ノルンは静かな表情でしばし空を眺める。彼女がまた一つ大人へと近づいた、そんな雰囲気を感じさせた。
そして遅れたように沸きあがった拍手喝采。負けたはずのノルンへ祝福の歓声が場を包んだ。
「おーい、猫娘ー! 凄かったぞー!!」
「素敵よ。今度いらっしゃって!! 3割引で売ってあげるからー」
「ノルン、惚れたぜ!!」
「また白熱した試合を見せてくれよ!! 期待の星!」
ノルンは涙を拭い、笑顔を振り撒きながら観戦客に手を振った。
あとがき
最初はぞんざいな扱いしていたのに、一気に主力メンバーに入りそうな活躍はなんだーw
ノルン 75→120→4730
ゼルダリア 1822
きっと創世界で鍛えられて強くなっていったんだなぁ(´ー`)
この分じゃ一緒に旅をしていたマレッタとデルサスのレベルも気になるネw
うにうにw
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| 305話 「ノルンの急成長」 | 2009,6,30 |
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305話 「ノルンの急成長」
うに魔女のアトリエ
〜創世記〜
創世界で行われた天覧武術大会。派手にコロシアムと煌びやかな娯楽施設とホテル群が更に盛り上げていた。
夕陽が掛かったグラムナート大陸。しかし歓声は勢いを増し、コロシアムは賑わう。
「一回戦の四戦目は――、うに姫と身内も同然なくり王子対、レガルザイン大陸の錬金術士ゼルダリアの弟子であるノルンだ―!!」
組み込まれる事を期待していたデルサスとジャックは部屋の隅っこで落ち込む。マッキーはそれを見て苦笑い。
沸き上がる歓声を背景に緊張しながらくり王子とノルンが向き合うように歩いていく。
「あーみてみて、栗ちゃんと猫ちゃん可愛いーw」「あ、オラと同族の匂いだ」
観戦席にてラステルとレプレに挟まれながら、うに魔女は席についていた。
「……って言うか私、選手なのに」
強引に引っ張られて一緒に観戦する事になったのだ。うに魔女は少し引きつった。
「くり王子ィ、負けたら承知しないぞォ――!!」
その近くでうに姫が拳を振り上げて檄を飛ばしていた。くり王子はそんな彼女に身を竦ませる。
闘技場に立つと同時に、突然噴火のように吹き上がるエフェクトと共に木々が出現。二人を囲む。
たちまち森が生い茂る中の一軒の木の家前の広場が広がった。
「これはノルンの生まれ故郷であるポット森のゼルダルアの家前だ!!」
ノリノリとダグラスが解説。
「なんじゃ? 騒々しいの…」「にゃ!?」
家の扉が開き、若々しい少女が婆さん口調で現れた。同時にノルンと共に硬直。
「ちょw ゼルダリア婆さんいるし!」
アイゼルの突発的な苦笑い。アリスは白目を輝かせ、怪しげに笑みを浮かべた。
「な、なんじゃ! こりゃ!!」
ゼルダリア婆さんはコロシアムの喧騒とノルン達の姿に戸惑う。
「ゼルダリア婆さんにゃー!」
「お、お前は……ノルン!?」
「うわ〜ん! 会いたかったにゃ〜!!」
抱きついてくるノルンに婆さんは呆気に取られた。くり王子はポカンと口を開けた。
「試合をそっちのけでノルンは師匠にハグを仕掛けた模様。感動の場面です」
しかし客は残酷にも「さっさと試合しろー」とのブーイングの嵐。
慌てる主催関係の十戒たち。アリスは相変わらず笑みを崩さない。
「今だ、くり王子ィ! 猫娘を八つ裂きにギッタギタにしちゃうのよォ――――!!!」
うがぁーと目くじらを立ててうに姫が声を上げた。くり王子は更に萎縮。
アイゼルはふとある事に気付く。
(そういえばゼルダリア婆さんは…死んでいたはず!?
クゥとの対決でアゾットを媒介にしてヤッケたちを守って昇天した。直接見てはいないけど、ヤッケ達の証言で既に婆さんの死を確信した。
闘技場に現れてきた婆さんは雰囲気付けのための虚像か――?)
ゼルダリアの杖がノルンの帽子を叩いた。ノルンは驚き戸惑い飛び退く。
「これ、何をしておる? 眼前の相手を無視するでない」
流石は経験豊かか、状況を見極め弟子を諭させた。
ノルンは呆けていたが、婆さんの言葉を察した。無言で頷く。そしてくり王子に向き合う。
「この試合、勝ってゼルダリア婆さんに見せつけるにゃ!!」
杖の切っ先を向け、くり王子に戦意を向けた。
思わず怯んだくり王子だったが、意を決して拳を固めた。まだ身体が震えている。
「水のマナ"ソーダミント"召喚にゃ!!」
ノルンの掛け声と共に、背後に現れる大人の女性の姿をしたマナ。水のドレスが揺れる。
ゼルダリアはそんな様子に僅かに見開く。
「いくにゃー! 長きに渡る修行で得た成果を見せるにゃ!! サウザントレヘルン・パス!」
気丈に見据え、杖を振りかざす。くり王子を囲むように無数の氷の球体が出現。分解して氷の矢が殺到。氷の矢による雨が霧を生じ、凍結の山が形成された。
地面を揺るがして冷気の嵐が吹き荒れ、林を吹雪で覆った。
猫娘が放ったとは思えないほどの凄まじい威力にゼルダリアも呆気に取られる。
「可愛い猫娘とは裏腹に攻撃は容赦なし! 決まったのかぁ――!!」
沸き上がる観客。
ノルンは油断せず、目を凝らす。
「むん」
くり王子の踏ん張る声。凍りの山は砕け散り、破裂するように破片が飛び散った。光が反射して光飛礫が瞬く。
無傷のくり王子が降り立つ。
むんと、表情を引き締めてノルンを見据えた。力む様に腰を落とす。
「うや――――!!」
腕を振り回し、突進。子供のような駄々っ子ぶりな動きだが、くり王子を追いかけるように地面が抉れながらノルンへ向かう。
「エアロナーゲル!!」
風の源素をかき集め、可愛らしい半透明のブーメランの形に凝固。それを投げつけた。
不恰好に曲線を描き回転を始める。しかし徐々に高速回転を始め、大気を切り裂くような音を立てながら地面を滑るように飛来。
「わっと」
寸での所で慌ててくり王子は飛び上がり、ブーメランは過ぎ去った。
貫通するままに向こうの木々を次々と斬り散らし、果てに衝撃波が吹き荒れ、林が一部木っ端微塵に吹き飛ぶ。
嵐のように凄まじい威力が伝わり、地面を揺らす。
(こやつ……相当レベルを上げおったのか!? ……信じられん)
ゼルダリアは呆然とノルンの雄姿を目に納めていた。
くり王子の振り下ろされた拳が地面を陥没させた。瓦礫を吹き飛ばし、大きなクレーターを生み出す。
ノルンは持ち前の身軽さで素早く飛び退いていた。
「ダースレヘルン!! え〜い!」
両手を翳した上空に氷の巨大なツララが生み出され、急降下。
くり王子は咄嗟にツララを白刃取り。しかし、重みで圧される。くり王子ごと地面を穿ち、広範囲に衝撃波を撒き散らした。
吹き荒れる極寒の雹が辺り一面を覆いつくし、ポットの森は一瞬にして銀世界に支配された。
(……ラングレヘルンの更に上のダースレヘルンまで!?)
ゼルダリアが唖然とする中、冷気が吹き付ける。
ノルンは杖を掲げ、一点集中。僅かに渦が発生。それらは杖へと収束。集中力が強靭な威力へ研ぎ澄まされていくのを肌で伝わってくる。
「くりー!!」
くり王子が拳を振り上げながら飛び出し、銀世界から抜け出す。氷の破片が飛び散る。
「ちい〜ちゃくなれ〜!!」
故を振りかざし、虹色に輝く星々が撒き散らされ、くり王子を覆う。
たちまちその身が縮んでいく。
「っせ〜の! 氷河期ストライーク!!」
風と水の源素で凝縮された刃を上乗せした杖を振りかぶって、槍のように投げつけた。
地面を裂き、冷気の渦を撒き散らし、霜が広がりながら槍のような刃がすっ飛ぶ。
くり王子はその危機に慌て、懐から不可解な瓶を取り出して飲み干す。苦かったか、目を瞑った。
「げっ、あれは酒……」
血気盛んなうに姫もくり王子の行為に青ざめた。
刹那の閃光。軌道上を奇麗に切り裂き、更に氷柱の山脈を形成させながら向こうの果てで水蒸気爆発を巻き起こす。
息を切らしながらノルンは見据える。
「わはははははは――!!!!」
形成された山脈を砕き散らし、黒い羽が空を羽ばたいた。小さくなっていた身体は元に戻っていた。
黒薔薇の花畑が地面を這う。
圧迫するほどの威圧がノルンを締め付ける。ノルンは息を飲み、呑まれまいと踏ん張る。
「貴様、やってくれたな……。このキングに!」
さっきまでの臆病な性格とは一転して、殺気を漲らせる黒き妖精王が場に降臨した。
容姿は変わらないが、邪険な表情に只ならぬ雰囲気を醸し出す態度が畏怖させる。
うに魔女もさすがに瞬きし、唖然と口を開けた。
まるでアリエルではないか。それを彷彿させるような殺伐した雰囲気を感じ取る。
「世界征服の野望を邪魔する奴は全て排除してくれるわ!! ローズフラム!!」
くり王子が踊り舞い、破裂するように黒薔薇の花びらが吹き荒れ、巻き起こった爆炎がノルンを吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
木の幹に身を打ちつけ、呻く。そして伏す。
「これまでか……」
観念したようにゼルダリアは目を瞑る。
「まだまだーっ!」
飛んできた声に瞑っていた目を開ける。ノルンは根性で立ち上がる。息を切らしながらも対戦相手を見据える。
こんな根性のあるノルンを見た事がないと、ゼルダリアは呆気に取られる。
(こんなノルンは見た事がない。いつの間にかあやつは……)
少しずつ感慨深い気持ちが沸いてくる。
「よっしゃ! ここからがノルンの本領発揮だぜ!!」
「ああ、ノルンはこのままでは終わらないだろう」
観戦席にいたデルサスとマレッタはノルンの実力を信じて疑わず、笑みながら見守る。
どんな相手であっても倒すまで油断しない意気。そして実力差があって避けられない場合、諦める事を良しとせずに立ち向かう強き意志。
一緒に旅を続けてきたからこそ分かる彼女の強さ。
ノルンは懐から精霊石を取り出し、うに魔女たちやクロア達を騒然させた。
「やっぱりこのままじゃ敵わないにゃ! マナ・チェンジっ!!!」
可愛らしい声だが気合一喝。突然と吹き荒れた威圧が旋風となって周りの木々を揺らす。
ノルン自身を呑みこんだ蒼い光の柱が噴水のような流れで噴き出す。
ゼルダリアはノルンの変身後の姿に驚きの顔を見せた。
かつて自分が精霊石を使ってマナチェンジした姿とよく似ていたからだ。しかし問題はそれではない。
ある一定以上の力量、それは即ち一人前の証であるレベルにまで高めた者のみが可能にする精霊石の解放。
それを甘えん坊で未熟だったノルンが可能にしたのだ。
「双杖の深蒼魔道師(ダブルワンド・サファイア・マジシャン) ノルン!!」
サファイアのような青色を染めた魔導師の服に、巨大な杖を二刀流と持ち、猫耳と尻尾が跳ねた。
液体のような動きで連なった波紋が広がり、雄々しい姿を見せる娘。
「その手の変身が流行っているのか? まるでレーヴァティルのコスプ……」
クロアの声を掻き消すように腕が踊った。思わずクロアは尻餅をつく。
「お止め、失礼ですわよ!」
クローシェは高飛車に振舞い、腰を下ろした。フン、と鼻息を鳴らす。
あとがき
ちびっ子の対決と思いきや、ハードな戦闘w
今まで目立っていなかったノルンが勇ましいw しかもゼルダリアの精霊石まで持ってたしw
本当は天覧武術大会はすぐ終わる予定だったのですよw 片手間の小話としてw
でも盛り上がってきて、いつの間にか長引いてしまいましたーw
優勝するのが意外とノルンだったりしてw
うにうにw
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| ビキニ飛鳥ちゃん | 2009,6,29 |
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七つの羽で鞍馬のパクリの「飛鳥」ってゆーキャラ。
常時デフォルメフリーザの正体が何故かコイツで実は鞍馬の女性バージョンで、後白髪っぽいキャラに変身。
最終回でどう見ても飛影な「佐助」と結婚させて子宝を儲けた展開にしたのが懐かしいw
ビキニは実は好きではないけど、結構力を入れてみた。
トーンとかがメンドクサイw
競泳着みたいにスラリとしたものの水着がいいですっw(>.<) |
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| 晴天の妖精を漫画にして描いてみた | 2009,6,28 |
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晴天の妖精を漫画風に書き出すとメンドクサイ。羽の模様がね…。ふう…(´д`)
もっと少女漫画チックにしたいなぁと思うけど、それだと少年漫画風に格闘描写ができなくなるから一長一短だよなー。
色々考えてみたけど、少女漫画風味にすると格闘描写は適当に。キャラの心理描写などを中心に細かく描いていく事になる。
ダメージを受けているようで受けていない描写が少女漫画に多いんだよな。
でも逆に少年漫画にすると晴天の妖精で無効化な展開だと萎えちゃうんじゃないか?
さんざん激しい戦闘しておいてそれはねーよ的にw
あと開闢の鈴が無敵なら、最初から使った方がいいんじゃないかと突っ込みも来そうですね。
花畑を展開して行くと言う描写も少年漫画風としておかしいかな?
プリキュアなどは見ていないけど、あんな感じにした方がいいのかな?
それとも妖精王じゃなくて、九尾とかみたいな獣染みた化物とかが燃える方かな?
まだまだ探求の道は続きそうですw(*^ー^*) |
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| 304話 「ファイティング・クロス」 | 2009,6,27 |
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304話 「ファイティング・クロス」
うに魔女のアトリエ
〜創世記〜
歓声が響いてくる薄暗い廊下。壁や天井を走る魔法陣のような線と文字の羅列の淡い光が灯り代わりとなっている。
試合を終え、闘技場から去るレグリスを迎えていたのは困惑気味のクロアだった。
「隊長。その気になったらパスタリアを壊滅できるんだな……」
「い、いや……」
冷や汗ながら首を振って否定した。しかし気まずい空気が流れる。
この間の戦いで自惚れたセロットを罠に嵌める為に取ったレグリスの戦法。冷静に考えてみればクロアの言う通りだった。
(……やりすぎたな)
「レグリスー! 超カッコよかったよー!」
あらぬタイミングで明るい声が飛んできた。なんと褐色の娘がレグリスに飛び込んだ。
「ア、アマリエ!?」
「あんな凄い豪快な破壊見ててスカッとしちゃったー! またそういうの見せてねっ!」
「お、おい。物騒な事は言うなっ」
しどろもどろに戸惑うレグリス。クロアの視線が痛い。
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歓声が飛ぶ! 透けて見える塔の内部。SFのように複雑に入り組んだ無機質な鋼鉄の谷。
まるで巨大化した時計の内部に入ったかのような内部構造だ。
頼りない足場を頼りに飛び移り、交錯する二人。
まだ幼さが残る少女。黒い髪が流れる。服装は大胆にも露出度が高く、未発達の肌が覗く。彼女はココナ。
クロアの妹的存在でいつも一緒にいる。しかしレーヴァティルながらも接近戦が得意で戦闘能力が高く、クロアにも頼りにされていた。
ココナの振りかざす一対のバトン。ツインテールになる髪留めがバトンの武器になるので、戦闘時は髪を下ろす事になる。
そしてもう一人はうに姫。栗色に近い金髪でうに魔女と同じ特徴であるうに頭が見える。軽快な服装の割に露出度が低め。血気盛んなお転婆娘。
ココナのバトンに対するは、拳を纏ううにの形をした光のグローブ。
互いに硬質の為か、ぶつかり合う度に硬い音が響く。
「はあああああああっ!!!!」
裂帛の気合。互いに激しい攻撃を繰り出しながらも共に捌き合い。衝撃音と共に重圧が観戦客にまで伝わる。
「こんなチビに負けないもんー!!」
「チビはそっちよォ――!」
回転されたバトンを、交差されたうにグローブで白刃取り。隙ありと、うに姫はうにの形をした靴で回し蹴りを見舞う。
しかしココナは足でガードしつつ吹っ飛ばされる。
「くらいやがれェ――! 御子格闘術・うに獅子連弾砲!!」
追い撃ちとばかりに、両手のうにグローブを重ね、うにの気弾を数発撃ち出す。
「そんなもん、ぷーのぷーだよ!」
だがココナはバトンを眼前で高速回転させ、それを盾に弾く。
「御子格闘術・うに天虎撃!! うらァ――――!」
その隙に間合いを詰めていたうに姫の急降下のパンチがココナへ襲い掛かる。
「なんの!」
反応したココナの振り上げたバントで受け止める!
互いに弾き、それぞれ反対側の壁を足場に着地。すぐさま壁を蹴り、再びの激突。
気合満タン! 飛び抜けた運動能力で動き回り! 勝ちを譲れない激しい競り合いを繰り返す!
「やあああああ!!!」「うオオオオオ!!!」
光の剣のように噴くバトンの切っ先と、両手を組んで巨大化されたうにグローブが衝突!!
破裂するように衝撃波が周りに広がり、塔の内部にヒビを走らせた。
「ココナのレベルは4200。そしてうに姫は4150……」
(共に将来性が有望される数値ね)
アリスは呟き、低く笑む。
一体どれくらいの時間が経ったのだろうか、真上だった太陽は既に地平線へと近づいてきていた。赤みが広がりつつある。
塔の内部は破壊しつくされ、破片が散らばっていた。
壁にはいくつもの穴が開き、中には雲海の景色を見渡せるものまであった。
ココナとうに姫は共に息を切らし、汗で身体はびしょ濡れ。
「全くの互角だな……」「ああ」
クロアとレグリスも唸りを上げる。
「まだ終わらないのぉー」
くり王子は退屈そうに呆けていた。
「この手を使いたくなかったけど、切り札を使わせてもらうわ」
ココナは笑み、そして口ずさみ始める。
「まさか……!」
クロアは観戦席から立ち上がった。
流れるヒュムノス語。レーヴァティルが詩魔法を放つ時に呟かれる言葉。
「どうした? クロア?」
「詩魔法が使えるようになっていたのか……? しかし、これは……」
詩魔法は接戦になると役に立たない。ましてや接近戦同士の対決では集中を削がれる事も多く、隙を突かれる危険を冒しかねない。
ヒュムノス語による詠唱が必要な為、どうしても無防備にならざるを得ない所も多い。
だからこそレーヴァティルは騎士や剣士に守られなければならないのだ。
「呑気に呪文を唱えてくれて悪いけど、隙だらけよォー!」
やはり、指を咥えて待つ訳には行かない。当然とばかりにうに姫は地を蹴った。
ココナは見開く。
「ブラストフィル・ダンス!!」
「御子格闘術・うに竜巻連撃!!」
うに姫は回転しながら蹴りの連撃を見舞う。しかしココナは詩魔法を唱えたまま軽やかに身を翻し、回避。
かわされた事に焦燥を帯び、うに姫は回転したままの惰性で三日月の軌跡を描くローキックを放つ。
謳いながらココナは軽く前方宙返りでかわし、バトンの一撃を振り下ろす。重い一撃が激突音を響かせた。
「ぐあっ」
うに姫は腕を交差し防御するも吹っ飛ばされ、下方の壁に激突。破片と共に煙が噴出し、穴が開く。
クロアは呆然と立ち竦む。
未だにココナは酔ったような動きを見せながら、詩魔法を紡いでいる。
「青魔法ね……」
ジャクリはクロアが疑問に思っている事に答えるように呟いた。
「謳いながらダンスを踊る事で、接戦しながらも詩魔法を使えると言う利点を持てたようね。ココナのようにレーヴァティルながら接近戦が得意なタイプだからこそ出来る芸当よ。
そして青魔法で自身を強化して得意な分野を更に引き伸ばす。本当に類稀なる逸材だわ」
クロアは唖然とジャクリの言葉を聞き入れ、成長したココナの雄姿を目に焼き付けていた。
「……いつの間に」
レグリスも驚きを隠せなかったのか、唖然としていた。
「ただ、そういう戦法は長く続かないのよね。身体や精神に負担が同時に圧し掛かるから……」
ジャクリの言葉にクロアは危惧を抱く。
(……だから今になって出したのか)
ココナの切羽詰った表情が、ジャクリの言った危惧を表していた。
途端に壁が豪快に破砕。破片が飛び散る。額に血を流しながらうに姫が姿を見せた。
「フフフ、こーなったらあたしも取って置きを出すのよォー」
掌を天に翳し、その上に点けられた火のように火のマナが現れる。うに頭を持つ珍しいマナだった。
うに魔女は心当たりがあり、口を開く。
「行くわよォ! わが相棒のファイアブルーを……レッツ・スタンバイ・ファイヤー・ブレイズダイブゥ!!」
火のマナを自らの胸元に叩きつけた。火炎が溢れ出し、身体を呑み込んでいく。
うに姫の額にロウソクの火を模した紋章が付き、髪の毛や服の色調も火炎を象徴するように赤く染まっていく。
火炎を模した身軽な軽装に服装を変え、燃え上がるような印象を醸し出す。
「紅蓮乙女(クリムゾン・メイデン)うに姫!!」
燃え盛る火炎のオーラをまとううに姫の姿に、うに魔女も面食らう。
(あ、あれってうにブルーとブレイズダイブするのと変わらないじゃん〜!)
燃え上がるような展開に観戦席から歓声が沸きあがった。
不敵の笑みで睨み合う二人。瞬時に互いに姿が掻き消える。その真上で衝突音と共に放射状の衝撃波が弾けた。
連鎖する花火のように次々と衝撃波が連なっていく。
目にも留まらぬ二人の戦いに、塔は更に破壊しつくされ、破片が次々と飛び交う。
上の塔が少し傾き始め、その様子にクローシェやオリカなどのレーヴァティルは青ざめた。
「……うに姫の方がうに魔女よりもブレイズダイブを使いこなしているわ! 体術のキレが違う! 身のこなしも違う! そして維持時間が長いっ!!」
力説するアイゼルの解説にアリスは眉を跳ね上げた。
まるで自分より優れていると言いたげにも聞こえたのだろうか。しかし不可解に妖しげな笑みを見せた。
限界か、決着をつけるべき共に気を漲らせた。岩飛礫が舞う。クライマックスに達した戦いぶりに観客も興奮。
「御子格闘術奥義・うに無双竜虎連撃衝!!!」
うに姫は高速突進しながら拳や蹴りの弾幕を繰り出し、周りの物を無差別に打ち砕いていく。
「超必殺技・フォトン・セイバァ――――!!!」
自身を独楽のように回しながらバントを振り回し、あらゆるものを砕き散らす。そして長く伸びた光の剣で一刀両断と振り下ろした。
ココナとうに姫の交錯。巨大な力場がぶつかり合い、塔の支柱を完全に粉砕した。
傾いていた塔が倒れてくると思いきや、観戦席に近づくにつれて透明化していき、掻き消えた。
「あくまでバーチャルだから、試合している空間とこっちの空間は隔離してあるからよぉ」
主催者として観客の安全を主張するようにアリスは呟いた。
激突が巻き起こった所に煙幕が漂う。
二人の姿が見えてきたが、共に力尽きて伏せていた。
「引き分け!!」
ダグラスの宣言に観戦客はどよめく。意外な結果にクロアは呆然と立ち尽くす。
程なく救急に十戒が現れ、二人の身の確認に手早く行われた。
どうやら必殺技同士の威力が完全に相殺して、二人は無事に済んだ。だが、身体は限界に陥って昏倒したとの事。
その報告を受け、クロアは胸を撫で下ろす。
「ふむ、ココナもいざとなれば塔を倒す事も出来るわけか。恐ろしいな」
レグリスの皮肉にクロアは引きつった。
「残念でしたー!! ココナちゃんもうに姫ちゃんも白熱した勝負を繰り広げていただけに惜しい! 次回の大会にも期待しているぜ。
さて、続いて一回戦の四戦目の選手は……」
一回戦の四回戦の勝者は当然不戦勝になる。選手の誰もが唾を飲み込み、次の試合に注目した。
何故なら、そこで勝てば二回戦では闘わずに三回戦へ行けるからだ。体力を温存でき、かつ有利に優勝へ近づける。
それを見透かしたようにアリスは更に怪しい笑みを浮かべた。
「おおー!! これはァ――!!」
ダグラスの言葉に、選手は食い入る。
あとがき
○ライナー
×テ オ
×セロット
○レグリス
×うに姫
×ココナ
???
???
残りの選手。
うに魔女、マッキー、クロア、フェルト、くり王子、ノルン、デルサス、マレッタ、ジャック、フィー
二回戦ではアルトネリコ2のレグリスとアルトネリコの主人公ライナーの激突が!?
残りの選手で誰と誰がぶつかるんだろうw
うにうにw
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| 303話 「アルトネ陣営 快勝劇!」 | 2009,6,26 |
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303話 「アルトネ陣営 快勝劇!」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
賑わうコロシアム。昨日の大予選が終わり、ついに本戦が始まったのだ。 「…なんかコロシアム広くなってない?」 アイゼルは怪訝そうに見渡す。気のせいと言うレベルではなく、鬼蛸族との戦いより五倍強ぐらい広かった。 彼女の様子にアリスは密かにせせら笑う。
「さぁ、お待たせやがったかー!? 天覧武術大会、本・戦トーナメントォォォォ!!」 何故か聖騎士総隊長であるダグラスが張り切って司会を取り仕切っていた。 (本当は出たかったのに、一定のレベル以上の者はダメってアリスが拒否したんだよな。このストレスを司会でぶちまけてやるぜ!) コロシアムの主催者席の真上のモニターにはトーナメントが浮かんでいた。まだ選手の名前は記されていない。 「そして注目の第一回戦の一番最初のカードは…。異世界のソル・シエールでの英雄ライナーと、未熟だけどザールブルグの聖騎士隊長テオ」 コロシアムの中心の上部でモニターが映し出され、ライナーとテオが映る。その間に『VS』が入っている。 周囲の空に花火が打ち上げされ、華やかに空を彩り、歓声が沸きあがった。 闘技場にライナーとテオが居合わせ、対峙する。 「今回の闘技場の舞台は…ソル・シエール地域の目玉『アル・トネリコ塔(プラティナ)』だー!!」 コロシアムの闘技場を含む広場に魔法陣が浮かび上がった。十個の光り輝く円を結んで木のように枝分かれして、葉っぱのように文字の羅列が到る所に並んでいる。アリスのセフィロトである。 異世界への穴を開けたかのように、その魔法陣の中心から塔が飛び出した。とても太い塔だ。 そのビジュアルに観客は面食らって驚きの声が上がった。 「もちろん立体映像だぞ? 本物を舞台なんかにしたら国際問題だろ。ニセモンだけど雰囲気でノッてくれよー!」 ダグラスは空を飛び、ノリノリな調子で解説。
塔の上部に位置する立派な都市部。近未来的なビル郡が並び、塔に張り付くように建築されていた。 立ち並ぶ家の間を走る路地を足場にライナーとテオが対峙。 「また、お前か」 溜息をつき、ライナーは半眼を瞑る。 「さっきは不覚を取ったけどな。だが、今回だけは本気で行かせてもらうぜ!」 テオは根拠のない自信満々の笑み。懐から精霊石を取り出し、それを差し出すように翳す。 ライナーは眉を顰めた。 「マナ・チェンジッ!!」 眩い閃光が広がった。嵐のように膨れ上がる威圧にライナーは目を丸くした。 「そういや、彼も出来てたっけ」 アイゼルは引きつったような笑みを見せる。アリスは意味深な怪しげな笑みを見せる。 テオはアスラとの戦いでマナチェンジして戦った事があった。だが、あまり活躍がなかったため誰も気付かなかったのだ。 冷気の旋風が吹きつけ、ライナーは引き抜いた剣で顔を庇いつつ見据えた。 『雪燕華の聖騎士(スノースワロー・パラディン)!!』 背中に燕の翼の形をした氷が伸びていた。両肩にはアイリスの花弁を模した氷のガーダーが備えられている。鏡のように磨かれた様な氷の鎧を纏い、悠然とテオは姿を現した。 剣の切っ先を差し出し、ライナーへと向ける。すると刀身に雹が纏わりつき、瞬く間に花から突き出た刃のような大剣が形成された。 「へっ、俺を甘く見るなよ? 霜焼けすっぞ」 減らず口を叩くと同時に、テオのバックの両脇からアイリスの花が咲くように氷柱が噴いた。 テオは地を蹴った。その瞬間、ライナーの側面に迫っていた。 (速さが以前より断然速ぇえ!) テオの振り下ろした剣が床に突き刺さる。既にライナーは抜群の反射神経で飛び上がっていた。 「甘ぇ…、凍えさせるだけが能じゃねぇんだ。喰らいな! "白華繚乱"」 突き刺した所から広がるように氷の棘が剣山のように突き溢れた。 塔を揺るがして、棘が次々と生え出してライナーを追いかける。 「詩魔法みたいなの直で使えるみてーな変身だな。だが、凌げないレベルじゃないぞ」 軽やかに足場を次々と飛び移って、追いかける棘の山を突き放した。 「さっきのは囮だ。ここから本番だ、終わらせるッ!」 テオ自身が空を飛べることにライナーは驚く。急降下しながらテオは剣を振り下ろす。 冷気の刃が巨大化してライナーを覆い被さる。 「認めるぜ。お前の強さ」 観念したのかライナーの一言。表情を引き締め、渾身の力を振り絞る。たちまちオーラが振り上げた剣に収束する。 「インパルス・バスターワンキル!!」 振り上げた剣を一気に振り下ろした。 一刀両断。重い一撃が巨大な氷の剣もろともテオを鎧ごと切り裂いた。驚愕の表情。翼が砕け散る。血飛沫が宙を舞った。 溶け消えていく氷の破片と共に、テオは落下。地面に伏した。 「悪いな。あん時は手加減してたんだ。本気出すと殺してしまうの分かってたからな…」 「やはり英雄は強し! 俺も対戦してみてぇ…、ライナー選手の圧勝だー!!」 響く勝利宣言。観客は呆然とライナーの強さを目に焼き付けた。 流石のうに魔女もポカーンと間の抜けた顔で勝敗を目にしていた。 「当然の結果でしょうね…。アル・トネリコ塔を支配した最強のレーヴァティルであるこの私が、彼と闘って負けたんだから」 観戦席でジャクリは腕組みしながら呟く。
どこかの秘密部屋なのだろうか。SFの世界のように魔法陣に囲まれた制御室のような一室で、うにっ子達がせっせとキーボードを叩く。 モニターにはライナーが映っていて、泳いでいたターゲットマークが固定されると数値が弾き出された。 「…ライナーのレベル6450。まずますね」 分身体であるうにっ子の得た情報も共有するアリスは静かに呟く。 「じゃあテオは?」 「2100。話にならないわね」 アイゼルの問いに応え、軽く笑う。
「気を取り直して、第一回戦の二戦目は大予選でも大活躍だったレグリス隊長ォー!! それに対するは色男の女好きなセロット!」 重装備の青紫の鎧を身に纏う剛健な大男が姿を現し、それとは対照的に優男で露出の覆い服装の軽い美男。 「やぁ! 全世界の美女、見ているかい? これから俺様の雄姿を焼き付けてくれよっ」 踊り舞い、長い髪の毛を掻き揚げ、観戦席へ向けて甘いスマイルを見せ付けた。 女の歓声が上がり「LOVE セロット優勝させ隊」と書かれた旗が所々上がった。 大の人気でさしものレグリスも驚く。 「あんな軽い男なんてレグリス隊長にかかったら楽勝だよーだ!」 露出の激しい褐色の女性がセロットファンにケンカを売っていた。喧騒が沸きあがり荒れていく。 「アマリエ…」 頭痛の種と言わんばかりに額に手を当てた。 「まぁまぁ、これから負ける君には同情するけどね」 「ふん、実力が伴ければ吐ける台詞じゃない。恥を掻くだけだ」 色目を使うセロットに頑固な態度で返した。どこか火花を散らした気がした。 「さぁ、挑発の応酬はこれくらいにして試合しようぜー!」 弧を描くように空を飛ぶダグラスの言葉で、再び空間が割れた。 巻貝のような丘が聳えた。所々町並み、石像や噴水が見えた。 「今回の舞台はクロア達の住んでいる『森と水の都パスタリア』だぜー!!」 人々のいない静かな公衆の場。レグリスとセロットは対峙する。 「最初っから全力で潰す!!」 いきなりレグリスがセロットへ飛び掛る。巨躯の影が獰猛な恐竜のように大きく見せた。呆気に取られたセロット。 両手の円盤が勢いよく、地面を穿つ。飛礫を飛ばし、大穴を明けた。 突然の地響きに観戦客は戸惑った。 「先制攻撃! まともに喰らったら俺もお陀仏だぞー!!」 ノリノリなダグラスは空を舞う。アイゼルは呆れ、愉快そうにアリスは更に邪悪な笑みを浮かべた。
「…驚かせてもダメだよ。ハニーなら抱擁して受け止めてあげれるんけれど…。野郎はお断りしているんでねー」 いつの間にか、遠くに離れていたセロットは余裕の表情でウィンク。レグリスは眉を跳ねた。 (先読みされたように思えた。大予選でもそうだったが、彼は何か掴み所のないモノがある。だからこその奇襲。だが失敗した) 観戦客はどよめいた。セロットファンは次々と歓喜の悲鳴を上げる。 「む…?」 うに魔女は見開く。セロットの頭の周囲に光飛礫が舞っていた。見覚えがあるような気がして首を傾げる。 クロアもココナもレーヴァティルの一同もセロットの顔に視線を注ぐ。 美顔が引き立つように光飛礫が舞う。頭上に星の形をしたワッカが浮いていた。 「な、なんだとぉ――! セロットは三大神業の一つ…"ワッカギフト"を授かりし男だったのか――!!」 ダグラスの解説に、うに魔女は思い出したように口を開けていく。 クレインがそれを発動して強くなった事を辛辣と思い出す。 (あれは超〜すんごく頭が良くなって、周りの時間が遅く感じていくワッカだわ。普通に戦ってたら勝てない…)
幾度なく繰り返される爆破の余韻。 「うおおおおおおおお――ッ!!」 レグリスの円盤が掠りもせず、床を穿つ。セロットは優雅に舞い、掌からうにを生み出して蹴りつける。 狙い違わずレグリスの額に命中。 「っぐ!」 額から血を噴出し、呻く。 「俺様にとって、アンタはスローに見えるんだぜ」 軽やかに屋根の上に降り立つセロット。 レグリスは息を切らしながら見上げた。睨みつけるが、セロットは「お〜怖い」と茶化す。 すると轟音を立てながら、突然辺りの建物や床が崩れ、陥没。 セロットは崩れた足場によって体勢を崩し、この機を待っていたレグリスが間近に迫っていた。不敵に笑んでいた。 「ただの殴り合いで強さを決められると思ったら大間違いだぞ」 皮肉にもワッカギフトによって、レグリスの意図を割り出してしまった。 (戦いの中で相手の性格や能力を分析し、対策の為に地の利を生かした…? しまった、ただの体育系馬鹿じゃなかったのか) 己に酔いしれ、相手を過信してしまったセロットに策を見破れる洞察力がなかった。 体勢を崩したまま滞空中のセロットにはなすすべがない。 「これが経験の差だっ!」 「ちょ…、待……!」 有無を言わせない重い一撃が叩き込まれ、セロットの断末魔と共に勝敗は決した。 観戦客から女性達の悲痛な悲鳴が上がった。応援したのに敗北してしまい、落胆したのだろう。 「レグリスのレベルは5110」 アリスは勘繰るような目付きで呟いた。
「レグリスって筋肉バカじゃなかったんだな。ワッカギフトの奴に勝つなんて凄いぞ! さて一回戦の三戦目は…、異世界人同士の対決! うに姫とココナのタイマンだ――!!」 賑わうコロシアム。 闘技場にうに姫とココナが対峙した。対抗心を燃やしているのか、互いに戦意を漲らせていた。 間近にまで迫り、互いに胸をぶつけ合いながら不敵の笑みを向け合う。
あとがき
なんかアルトネキャラが大活躍してね?(笑
単なる天覧武術大会ではなかった!? アリスの意図とは? しかしアルトネリコの連中も破格のレベル数値w ラスボスを倒した後と言う設定なので、結構高いっスw
と言うかレベルって一体なんだろ? と言う方は作中でいずれ判明するかなw
ライナー 6450 レグリス 5110 テオ 2100
↓比較の為、主人公のレベル数値を記載 うに魔女 164→1740(レガルザイン編)→3600(グラムナート編)→5730(錬金大戦編)→14200(創世記編)→21000(歴史修正後)
お詫び:ムルの結晶(うに魔女と闘った頃)のレベルは2000に修正しました。 だって200じゃあまりにもインフレしすぎているし、無理があるので変えさせていただきました。
うにうにw
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| 描く漫画の為に練習しているんだけど | 2009,6,25 |
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前の雰囲気を残しつつ、新たな絵柄で描きたいと思ってます。 しかし、ドラゴンボール的な絵柄から抜け出せなくて苦悩している日々です。 |
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| 302話 「奮戦! 大予選の巻」 | 2009,6,24 |
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302話 「奮戦! 大予選の巻」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
音色を響かせ、大空に洋蘭が咲き乱れる。 「うぎゃああああああああ――――ッ!!」 開闢の鈴を食らい、吹き飛ばされる鬼蛸族は空を舞った。たちまち黒いシルエットと化し、砕け散る。 その瞬間、輝く卵が現れた。それは一瞬の事で、卵は虚空へ溶け込んで消えていく。 クロア達や観客の誰もが、うに魔女の大判振る舞いの大技に驚愕の表情を見せた。
軽やかに舞い降りるうに魔女。光飛礫を撒き散らし、ガッツポーズを取り微笑む。 鈴の音色によって殺伐していた観客の毒気は消し飛び、逆に歓声が上がった。 「すごい…」 さーしゃは目を潤ませながら、うに魔女を見つめ続けていた。 ハートの模様が入った白い蝶々の羽。ふわりと羽ばたき、光飛礫が舞う。足元では常駐的に花畑が咲き乱れ続ける。 絵本から飛び出した憧れの妖精か天使の様に映り、感嘆の声を漏らした。 うに魔女はその視線に気付くと、振り向きながら額にVサインを添えて微笑んだ。 さーしゃの顔は晴れるように満面の笑顔に満ちる。 縛られていた紐が緩み、ゆっくりと降りてくるラステルをうに魔女は受け止めた。ラステルは表情を綻ばし、抱きついた。 「ブルーディ――――っ!!!!」 うに魔女は泣きついたラステルの頭を優しく撫で続けていた。 レプレが嬉し泣きながら、闘技場に飛び降り、ラステルとうに魔女の元へ駆け寄っていく。 祝い事のようにクラッカーが鳴らされ、カメラのフラッシュがいつまでも続いていた。 こうして、鬼蛸族との戦いは大予選のただの一戦として、これまでの事を単なるデモンストレーションと言う事にして大事に至る事はなかった。 寧ろ大好評の嵐に満ちた。
★ 昨日の予定通り、大予選が始まる。今度は選手の潰し合いとも取れる試合が延々と繰り返されていく。 対戦が進む最中、うに魔女は未だに息を切らしていた。 「お前、結構凄い奴だったのかー。ビックリしたぞ」 声に振り向くとクロアとライナーがいた。先ほどの活躍を目に収めていたらしい。 「…だが、その様子だとああいう大技は何度も使えるものじゃないな。大丈夫か?」 今度はレグリスが近づきてがらに問う。うに魔女は「大丈夫」と返し、微笑んだ。
「おらおらァー! 御子格闘術を目に焼き付けなさァーい!!」 うに姫は弧を描きながら軽やかに舞う。闘技場で対戦相手を得意の体術で翻弄し、三日月の軌跡を描く蹴りで場外に吹き飛ばす。 そして今度は脅えるくり王子が闘技場に立っていた。対戦者ににじり寄られて引き腰。 場外へ徐々に追いやられ、くり王子は泣きそうになる。 「わー!」 窮鼠猫を噛むように、突進しつつ両手で突き飛ばす。衝撃音が響き、対戦者は遥か遠くの塀にめり込んだ。 選手達は青ざめ、呆然と立ち尽くした。くり王子は恥ずかしながらそそくさと退散して行く。
とある闘技場で爆音が轟き、切迫した相手同士の激突に誰もが振り向いた。 マッキーと妖精さんが対戦していた。 転がりながら、飛び上がりながら、互いの譲らぬ銃撃戦。共に好機を窺っていた。 「ほう、ポウと互角に撃ち合えるとはな」 竜人のグレイが腕組みしながら感嘆を漏らす。 「異世界に出ると、骨のある奴が結構たくさんいるもんだねぇ」 竜人と一緒にいたノインは笑む。 地表を撃ち煙幕で姿を晦ましたり、隙を見せた振りをして攻撃後の隙を誘ったり、多彩な技で応酬しあったりと善戦が続いていた。 「おおおおっ!」 何を思ってか、マッキーはポウへ間合いを詰めていく。意表をつかれ、ポウは戸惑った。手元が狂ったのか狙いが逸れる。 弾丸が頬を掠るもマッキーは構わずポウの腹に拳を叩き込んだ。 「ぐほっ」 そのまま押し倒すようにポウの銃を押さえつけながら、小さい身体を地面に貼り付けた。 「チェックメイト!!」 ポウの額に銃口を突きつけ、勝敗を決めた。 「あーあ、落ちちゃったか」 ノインは息をつく。泣きそうな顔でポウはギブアップし、闘技場を降りていくのを見守る。 「あれは中々できるものではない。間違えば絶好の的だ。あの少年、度胸があるな…」 グレイは感心し笑んだ。
うに魔女は疲労の影を残しながらも闘技場の上で立つ。 「ふっふっふ。うに魔女よ、満身創痍のところ悪いが勝たせてもらうぞ!」 モモタローは血に飢えたような笑みを浮かべ、対峙するうに魔女を見据えた。 「くらえっ、桃厳流・鬼ヶ島崩しー!!」 地表に突き立てた刀を振り上げ、抉れたタイルが捲れ上がり、幾重の剣閃がうに魔女を襲う。 「ミラージュうにメイス!」 うに魔女はうにメイスを素振りし、その残像が間合いを縮め、モモタローをふっ飛ばす。 その後、飛んできた剣閃を余裕で打ち払い、霧散させた。 (…これだからインフレは好かないんだ) モモタローは悔し涙を流しながら、そのまま場外へ落ちていった。
「うおおおおッ!!」 「グオオオオ!!」 巨躯同士の激突! 竜人と重戦士の激突。主に超接近戦用の炎の刃と円形の盾のぶつかり合い。 衝撃波が吹き荒れ、闘技場の床に蜘蛛の巣状のヒビが走った。吹き付けた気圧に周りにいた選手も足を踏ん張って堪える。 響いてくる威圧に誰もが戦慄を感じた。 「グレイ、負けるなー!」「レグリス隊長、頑張れ!!」 ノインとクロアの掛け声。 竜人と重戦士は体重をかけた激突を何度も繰り返し、重々しい重圧が周囲に響き渡っていく。 闘技場のタイルが剥がれ、見る見る内に土の塊が露になっていく。 「ここらで終わらせてもらうぞ!! テラフレイム!!!」 グレイは息を吸い込み、火炎の息吹を吹く。闘技場を覆うほどの灼熱の壁が蹂躙。そのまま、場外へと及ぶ。慌てて選手は逃げ出した。 しかしレグリスは両手に備えた円盤型の盾で堪えきっていた。 円盤型の盾は高速回転をしていた。その回転力で火炎の息吹を弾いていたらしい。 だが多少のダメージは免れなかったか、表情が歪む。 「今度はこちらの番だ! グレイブシャッター!!!」 両手の円盤が刃を出し、回転をし始める。グレイは唸り、両手の炎の刃を生み出し、迎撃を試みる。 「おおおおおおおっ!!」 燃え上がるようなオーラを纏い、レグリスはグレイに突進。チェンソーの高速回転する刃が炎の刃と激突! 火花を散らした! 闘技場そのものが衝撃波で破砕。その際に岩飛礫が四散。選手一同は腕で顔を庇う。 それでもレグリスは何回も円盤を叩きつけ、グレイは押された。 「ヌゥオオオオオオオ――」 凄まじい高威力に炎の刃が砕かれ、閃光の中の世界でレグリスはグレイを切り裂きながら過ぎ去った。 その拍子に闘技場から大爆発が噴く!! 吹き飛ばされたグレイは場外へ重々しく落下。煙幕が立ち込める最中、胸の鎧に十字の亀裂が走っていた。 「辛くも2780番の勝利! これで4戦ポイント獲得」 レグリスは呻き、膝をついた。 「…俺が勝てたのは運が良かっただけだ」 駆け寄ってくるクロアに笑む。 大予選ながらも盛り上がった一戦の一つに数えられた。コロシアムで映るモニターで観客は歓声を上げた。 「グレイも落ちたか…」 ノインは溜息をついた。最低でもタフなグレイが勝ち残ると思っていただけに意外な結果に肩を落とした。
「あ、ノインさん…久しぶりだね」 フェルトと対戦に組まれ、ノインは頭痛が起きたように額に手を当てた。 彼の実力を知っているだけに彼女も気を落とす。 「しょーがないわ。精一杯やってみますか」 開き直ったか、自嘲気味に笑む。 フェルトへ間合いを縮めた。右手に装備された鉄鋼のグローブと剣がぶつかり合う。大気が破裂するような衝撃音が響いた。 終始攻め続けるノインの弾幕をフェルトは剣で捌いて防ぎきっていく。 「くらいな、気衝撃!!」 気功波が炸裂し、爆炎を巻き上げる。 しかしフェルトはこれを錬金剣で防ぎ、着実にノインを押していった。そしてそれは勝敗の結果に繋がっていく。
「な、なんだ! この女ッ!? なんか手強いでござるの巻」 腕に自信があった暗殺者は目の前のツインテールの女性に押されていた。 両手に装備されたトンファーのような朱色の鎌。 軽やかに踊るように舞い、一撃一撃を決めていく。 暗殺者は耐えかね、一撃必殺を繰り広げるべき、サイドステップで移動を始めた。 女性の周りを囲むように暗殺者は分身した。 「これぞ、わが鳴門忍術! 螺旋分身の術でござるの巻!!」 四方八方から嵐のような刃が吹き荒れ、闘技場もろとも切り刻む。破片が散り、気圧が吹き荒れた。 ツインテールの女性はそれでもことごとく防いでいく。 「今度はこちらの番だ…。アインツェルカンプ!」 瞬時に暗殺者と女性は交錯。過ぎ去る。そして双方とも背を向けたまま硬直。 遅れたように打撃の衝撃波が何発も吹き荒れ、暗殺者を躍らせた。 「……鳴門流忍者として面目ないでござるの巻」 完膚なきにまで叩き倒され、暗殺者は横渡った。 ツインテールが風に揺れる。見え透いた鋭い瞳。勝利宣言を受け、無言で闘技場を去る。
かくて大予選は終わり、勝ち残った十六人が揃った。 ライナー、テオ、セロット、フィー、うに姫、ココナ、フェルト、ノルン、くり王子、マッキー、デルサス、ジャック、マレッタ、クロア、レグリス、うに魔女。 コロシアムの中心で並び、祝福されるように観戦客から歓声が上がった。 「本戦のトーナメントへ勝ち残りおめでとうございまぁす。それではまた明日ぁー」 アリスは微笑み、大予選に幕を下ろした。
夕暮れの地平線が一望できる建物の屋根。ノイン、グレイ、ポウと一緒に眺めていた。 「…まさか三人とも揃って敗退とはな」 グレイは目を瞑る。 (フィー姫やフェルトは常に前線にたって闘ってきた百戦錬磨。本戦まで勝ち抜くのは妥当かも知れん) 「明日から、フェルトやフィーの応援しよっか? 優勝は難しいかもしれないけどさ」 グレイとポウは笑みながら頷いた。 「…ったくなんなんだよ。手負いの虎に負けるなんて…。フジサン日の丸の中では最強だったんだぞ…」 その建物の下の路地。落ち込んだモモタローが周囲に影を纏いながら、心許ない足取りで歩いていく。
あとがき
イリス2のキャラも多いに参戦w ノインはともかくグレイとポウは癖があって使いづらかった覚えが…。 俺はフェルト、ヴィーゼ、フィーorノルンでラスボスまで進んでいたっスw ああーw ヴィーゼ可愛いよヴィーゼw 俺の嫁的なんですっ☆(意味不明w
うにうにw
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| 301話 「スイート的に鬼退治♪」 | 2009,6,23 |
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301話 「スイート的に鬼退治♪」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
朝日が昇る空。息を切らしながらレプレは街道を駆けていた。殴られたのか、頬は赤く膨らんでいた。猫の獣人であるが故か、軽々と塀と屋根を足場に飛び跳ねて城へ向う。
門前でテオ達、聖騎士隊が体操を繰り返していた。 「朝っぱらから…何?」 眠たそうにアリスは眉を寄せる。彼女はテオ達の体操を見守り、朝の敬礼を受ける所だった。 苦しそうに息を切らし、未だに膝に手をつきながら俯いていた。 「た、大変だよ! 鬼みてぇ奴にラステルが拉致されてしまっただ。助けてけろー!」 涙目で顔を見上げたレプレの切羽詰った表情にアリスは目を丸くした。 「なん…ですって…」
★ 「おい! 大会の内容を変えさせろ!」 その頃、唾を飛ばしながら鬼蛸族の二人が大会運営者のいる設置場に押しかけていた。 運営者は脅え、腰が引き気味。 こちらが主権を握れると察した鬼蛸族は睨みを利かせ、叩くようにカウンターの上に肘を乗せた。 「俺達は平和市民団体。今から言う事を聞け! アリスとの対戦一回戦だけで我々を優勝させろ」 「大予選をやらないと皆が…」 「うるせぇ! 言う事を聞けってんだろ!」 運営者の胸倉を掴み、カウンターの向こう側から引きずり出した。宙吊りにされ、苦しみもがく。 「…YES! その案は受け入れましょう」 吊るし上げられた運営者は離され、床に尻餅をついた。 鬼蛸族は声がした方に振り向く。冷淡な表情を浮かべているアイゼルが奥の階段から下りてきていた。 「ようやく話が分かる奴が出てきてくれたか。ならば、もう一つ。対戦前に我々の宣伝や平和主張のアピールを指示したい」 巻物とディスクの入った薄い箱をアイゼルは受け取る。 「分かったわ。逸早く宣伝しましょう」 そう聞くと鬼蛸族は笑みを浮かべる。 「それは実行できるだろうな?」 「ふふ、あたしもアリスに不満を持っていたの。あなた達が現れてくれて都合が良いから」 冷たい笑みを浮かべる。それを聞いて鬼蛸族は満足そうに笑み、そして何事もなく去っていった。 アイゼルはふうと息をつく。 (まぁ、不満って言っても違う意味でだけどね。あいつ甘いんだから――)
★ 大予選が開始される午前十時前、大掛かりな宣伝が行われた。 それを目にした選手一同に動揺が走る。 内容とは、うに魔女と平和市民団体が戦う一戦だけで優勝が決定する事。 あとは平和を訴えている宣伝が多いが、鬼蛸族が世界の主権を握るのが本心だと見え隠れする。 "鬼蛸族があなたたちの世界を平和に治めます! 平和の支配者による安心と安らぎの重税と毎日絶対労働を実地!" どこもかしこも空に浮かぶ旗のモニター画面に映っていた。 「な、何なんだよ…」 見上げていたマッキーは唖然とした。
コロシアムの観戦席は大勢に埋まった。歓声がいつものより激しい気がした。 「さぁ、これより鬼蛸族の平和市民団体のグァミン様とソンギョ様の参上です!」 途端に華やかな花火が巻き起こり、ご満悦な表情で鬼蛸族の二人組がコロシアムの場に現れ、闘技場へと歩む。 「そして平和と愛を与えてきたテチャック様を暗殺した悪の支配者のアリスこと、うに魔女でーす!」 おどろおどろしい黒煙が巻き起こり、その中からコントラストに映えたうに魔女が現れる。真剣な表情で鬼蛸族を見据える。 怒りを抑えるように静かな足取りで闘技場に向かう。 アリスに近い黒いゴスロリに近い服装。うに頭も手伝ってか、鬼蛸族の目にはアリスに映っていた。 観戦席でクローシェ達と共にさーしゃが座っていた。 完全なアウェーの雰囲気。胸を締め付けられるような嫌な気持ちがさーしゃを苦しめた。 心配させないようにクローシェはさーしゃの肩を引き、自分の身へ抱き寄せた。
「そして、主催者のアリスに変わってアイゼル将軍様の登場でーす!」 驚倒に近い歓声が沸きあがった。 「さぁ、これでアリスが負ければ首チョンパ!! 平和市民団体様の公開処刑を始めまーす! オーホホホ」 「…なんかノリノリだわねぇ」 わざとらしい哄笑を上げるアイゼルに、こっそり隠れていたアリスはジト目で見やる。
「…だそうだぜ? アリスさんよ。これで貴様も終わりだな」 鬼蛸族主体にペースを握られ、完全に見下されたうに魔女。だが、彼女は何も言わない。 「アリスのしてきた悪行を世間に暴露させてやる。作成したフラッシュを奔放公開だ!」 二人組は共に片手をそれぞれ反対側にむけて差し出した。 闘技場の真上に通信モニターが現れ、何かが映る。 コミカル調に映った絵図。邪悪なアリスがノコギリ風の歯を見せながらケケケと笑う。つぶらな目をした五つの目をした鬼蛸族が対峙する形だった。 「私は平和主義者のテチャック。これまで創世界を平和に治め、総体制覇する事で悪い民族を真面目に更生させるべき毎日労働をさせて数千年。土日も祝日もなく懸命に働く事によって罪を浄化させる私の政策が続いてきたのに…」 涙を潤ませ、泣き崩れた。 サディスト的な高笑いしながら、アリスは何度もテチャックを足蹴して苛める様子が映る。 「なんか、ある意味間違っていないような気がするけど…」 マッキーは苦笑い。 「この私。アリス様が世界征服する為に殺るわぁー!!」 何故かギロチンが出てきて、泣き喚くテチャックの首をはねた。 「わーっはっはっは! わが奴隷として住民どもよ永遠に働けー!!」 魔王みたいなポーズでバックに映るアリスの影。その下方で苦しみながら住民が畑を耕す。 ナレーションが流れた。 「これまで平和に保っていたテチャック様が殺される事によって、今の世は混乱し無法地帯に陥れられた。こうして今ではアリスに政権を握られ、住民は踊らされるままに奴隷と化した。あなたは現状の地獄を見逃すとでも言うのですか!」 最後の締めにこの一言が強く響き渡った。 満足げに鬼蛸族は胸を張った。 (これで馬鹿な住民や旅人も理解しただろう。ガキにでも分かりやすく作るのに、そこだけは苦労したわ) うに魔女は直立不動。ただ何も言わず見据え、さーしゃの泣き顔が脳裏に浮かんでいた。 「さぁ、出でよ!! 我が同胞よ!」 鬼蛸族は図鑑を開き、噴出す煙と共に数十体の個性的な鬼蛸族が場に現れた。 巨人のような巨躯の鬼蛸族。小人のように小さいが数は多い鬼蛸族。大砲をかづいた鬼蛸族。 「おいおい、女性一人を相手に卑怯じゃねーかよ!!」 始めから用意していたとしか思えない卑怯な手段に観客は愕然。 「ひゃっはー! そらよ」 笑んだ鬼蛸族が地を蹴り、うに魔女を殴りつけた。しかし彼女は足を踏ん張っていた。 そして殴られた頬を手首で拭う。 うに魔女は静かな怒りを内に溜め込んだ。 (でもまだ! ここはガマンしなきゃ…) 効いていない様子の彼女に鬼蛸族は怪訝な表情を浮かべる。 「さぁ公開処刑だ! 一斉に殺れぇぇぇぇ!!」 号令と共に、鬼蛸族は一斉に飛び掛った。嵐のように飛んでくる得物をうに魔女は身を翻してかわす。 闘技場はしばらく衝撃波の嵐が吹き荒んだ。
うに魔女は平然と突っ立つ。鬼蛸族は息を切らし、睨みつけていた。 「クソ…、ちょこまか逃げんじゃねぇ!! こーなったら…取って置きの切り札を出すか」 図鑑を取り出し、煙が噴出した。 なんと頭巾で口を塞がれ、手足を縛られて涙目を零しているラステルが現れる。 (やっぱり! 奴らの仕業ね) うに魔女は見開く。 「ラステル返すだー!! お願ぇだから返すだー!」 観戦席から飛び出したレプレは見えない壁に阻まれ、手をつけて叫ぶしか方法はなかった。 鬼蛸族は懐から銃を取り出し、それをラステルの眉間に突きつけた。彼女は恐怖に震える。 「さぁ、大切な友達を見殺しにしたくなかったら動くな!」 うに魔女は唇を噛む。彼女の周りを鬼蛸族が取り囲んだ。 ラステルは首を振りながら、何かを必死に伝えようともがく。 そんな様子にコロシアム中の観戦客から「卑怯だ!」とブーイングが飛ぶ。 座布団や空き缶が飛ぶが、見えない壁によって弾かれる。 「吠えるな! 平和の為にこんな女一人死んだ所で慌てるほどの事はあるまい」 「そうそう、悪いのはそれを招いたうに魔女よ」 醜悪な笑いを浮かべる鬼蛸族に客は怒りに満ちた。暴動にでもなりそうなぐらい、観戦客は荒れていく。 うに魔女は彼らを睨み据えた。 「本当に平和を求めたいの?」 「ああ、俺たちの平和をな! 家畜も同然のお前らなど知った事か!」 顎を上げ、嘲った。 うに魔女は憮然とした眼差しを向ける。しかし途端に笑顔に綻ぶ。 「ごめん。これだけ悪い奴だったら、思いっきり成仏させてあげれるね」 「なっ!? こいつが見えねぇのか!!」 豹変したうに魔女に鬼蛸族はうろたえ、強調するように銃をラステルに突きつけた。 しかし銃はピンク色に染まり、ぬいぐるみの材質に変化。ラッピングリボンが華やかに包装された。 「な、なんじゃこりゃああ!!」 鬼蛸族は手に持っていた得物が次々と可愛くアレンジされていく現象に絶叫。 気が付けば、闘技場には白い花畑が展開された。あっという間にコロシアムは煌びやかにラッピングされていく。 「…悪いけど"晴天の妖精"の「晴天デコレーションフィールド」で攻撃無効化させてもらったわ」 背中から生えた羽を羽ばたきながら、微笑むうに魔女。 「まさか…、人質を出してくるまで逃げ続けていたのは…」 「うにw」 逆に危機に陥った鬼蛸族は得物で攻撃を試みるが、綿で叩くような手応えしかなかった。 うに魔女は口笛を吹き、辺りは夜空に包まれた。世界中から白いアゲハが飛び交い、闘技場にいる彼女の真上へと収束、超圧縮されていく。 太陽のように輝く純白のうにが生まれ、煌びやかに地上を照らして行く。 観客は見惚れ、思わず感嘆を漏らす。 うに魔女は鈴を真上に放り投げた。純白に輝くうにと鈴が絡み合っていく。鬼蛸族は徐々に青ざめる。 「な…?」 純白に輝く鈴を手に、ウェディングドレスを纏い、うに魔女は踊り舞う。光飛礫が撒き散らされる。 そんな圧倒的な力場に鬼蛸族たちは一斉に落胆の表情を揃わせた。 『開闢のグラヴィールベル!!』 一鳴らし一撃。音色と共に光の波紋が広がりながら、光の爆発が炸裂。鬼蛸族はまとめて一蹴された。
あとがき
晴天デコレーションフィールドは新技じゃないっスw 前々からあったけど技名が出ていなかっただけの件w 以前のこれはかなり広い範囲で広がっていた反則級の技だったけど、気にしない、気にしない、気にしな〜いw
ちなみにエフェクトも新しく変えて見ました。 ただ攻撃を無効化するだけじゃ分かり辛いので、武器をぬいぐるみ化したり可愛らしく変化させる事で無効化らしい描写に出来ました。 殴り合いでも「エア・スイートクリーム」と言う目に見えない柔らかい大気が阻んでて、威力を完全に殺すと言う設定が…w とろけるような甘味が身体を浸透し、精神にも行き届けば、どんな殺意も癒せますーw クリーンヒーリング♪
うにうにw
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| なんか酷い事になってる… ´⊆` | 2009,6,22 |
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日本の政権を奪おうとする外国人!? ただ隣国で勝手に反日を喚くだけなら可愛いもんですけど、乗っ取ろうとする魂胆が酷い。 これは説得云々でなんとかなるレベルじゃない…。 毅然ときっぱり断って縁を切るなど態度を示さないと言いなりになっちゃうよw 「ウェーッハッハッハ、日本人は我々の奴隷となるべき言う事を聞いておればいいニダ!」 |
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| 300話 「さーしゃ、暴漢に絡まれる」 | 2009,6,20 |
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300話 「さーしゃ、暴漢に絡まれる」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
コロシアムの外側にいくつもの闘技場が並び、これが予選会場だった。 まるで人の海が押し寄せるが如く、参加人数は一万近くに達していた。 鐘が所々で鳴らされ、予選が開始された。 選手一同に緊張が走る。 「1789番の人、A−1の闘技場に上がってください」 番号を呼ばれた選手は一人ずつ、闘技場に上がる。 すると、目の前に浮いている蛍火を放つ円形の魔法陣から、鎧の怪物が現れる。巨躯で巨大な斧と剣を備えている。 「な、なんなんだよ…」 怖気づく普通の痩せた男。鎧と剣を装備した一介の剣士。軽く腕試しに来たのだろう。 「制限時間は六分。闘技場から踏み出すか、KOされた時点で勝敗は決まります。またギブアップする事も出来ます」 (そっかタオパペットと言う巨大な鎧の怪物と闘う事で、一定のレベルを超える者のみが勝ち抜く算段か) マッキーは緊張したまま、分析して唸った。 「のおッ!」 タオパペットに吹っ飛ばされた一介の剣士。軽々と宙を舞う姿は滑稽だ。 他の闘技場でも同様の悲鳴が上がった。 (うに姉さんって最初から過激なルールにしちゃうなんて、確かにサディストが増しているよなー) マッキーは思わず苦笑いした。 そのルールで参加選手の半分以上が落ちていく最中、豪快な打撃音! 場外へ勢いよくすっ飛ぶ鎧怪物。遥か遠くの雲の大地へ落下し、飛沫が上がった。観客は驚きに満ちた。 うにメイスを振り切ったうに魔女が佇んでいた。 「うにホームラン!!」 ガッツポーズを取り、調子がいいと笑んだ。他の参加者からどっと歓声が上がった。
「こんなの楽勝だぜ!」 ライナーは得意の剣の横薙ぎの一振りで鎧怪物を豪快に真っ二つ。破片が崩れ落ちる。参加者も驚きの叫びを上げる。 「全くだな」 今度は同じ世界から来たクロア。 槍を手に、鎧怪物に突進して木っ端微塵に破砕させる。 予選でも垢抜けた選手が軽く勝ち抜きを進め、それを見た選手の大半が戦う前から退場を申し出て不戦敗になる人も出てきた。
鎧怪物の大金槌が対戦者を追い詰めるように、執心乱舞に闘技場のタイルを割っていく。 マッキーは器用に動き回り、何発か発砲。爆炎が鎧怪物にいくつか炸裂。 手傷を負っていく鎧怪物は耐えかねたのか、背中にある斧が回転を始める。マッキーに緊張が走る。 (だけど、ここでいきなり大技を放つ訳には行かない――) 気丈に見据え、漲った気合からか僅かな威圧が大気に伝わった。 「錬金銃・レヘルン・ショット!!」 狙い澄まし、引き金を引く。弾丸は頭を飛び越え、背中に炸裂。連結していた斧もろとも氷結に閉じ込めた。途端に動きが鈍る。 安堵に息をつき、止めに最後の発砲。 稲光が鎧怪物に迸り、そして巨躯は崩れ落ちた。 「C−2闘技場の4529番の勝利!」 レフェリーの宣言を受け、マッキーは闘技場を下りていく。 「アイツ…威圧まで放てるようになっていたのか。頼もしいな」 腕組みしながらマレッタは笑む。 予選開始から半日経過――。夕暮れになる頃には一万近くいた参加者は数百人そこらに減っていた。
予選が終わりを告げ、選手一同の前にアリスは前に出る。 「ふっふっふ、おつかれさぁん。今日はおやすみなさーい」 にこやかな笑顔でねぎらいをかけられ、ホッとする選手一同。 「では…明日から…?」 アリスはまだ微笑んでいる。マッキーはなんとなく嫌な予感がした。 「そぉよ、大予選が始まるわぁ――――!!」 ノリノリに拳を突き上げて宣言。選手一同は一斉にコケた。 身を起こし、マッキーは苦笑い。 「……やっぱり」 説明によると、選手同士で戦い合い、16人になるまで篩いにかけると言う内容だった。
★ 夜空に煌びやかに輝くネオン。ライトアップされたホテルが神秘的な輝きで人の目を惹きつけた。 新しく建てられたホテル群が旅行者や参加者を迎え入れていた。 最新鋭の設備で充実され、通信用モニターはもちろん、水洗トイレも完備、大きなベッドに広大な部屋。家族で来ても困らないぐらい親切な設備。 更に公共の施設にはカジノ、ゲームセンター、銭湯、数々の店などが設備されており、飽きさせなかった。 それでいて格別に安い宿泊賃が訪れる客を魅了させた。 「ったく、アリスって魔女はどんだけスゲー魔力なんだよ。一瞬にしてホテル群を建てるなんてな」 貴族がくるような豪華なレストラン内部にて、ジャックはバツの悪そうな顔を浮かべた。 「それが到達者ってことなんだろ?」 料理を頬張り、デルサスがそれに答えた。 「そんなことより、あの女は素敵だなーw」 今度は妖精のポウがはしゃぎながら、ある女性を指差した。 金髪で気品の良い姫のような女剣士と中華の服を着た凛とした女性が話し合っているのが見えた。 「おおっ!」 思わずデルサスは目玉がハートになって飛び出した。 「…俺んトコのミシャじゃないか。ってか隣にいる女剣士! うは、いいぞー!」 ジャックも隣の剣士に目を奪われた。 クローシェとミシャに目を奪われて、だらしなく鼻下を伸ばしハートを飛び散らしていた。 すると、テーブルの上に湯気が立った料理が置かれた。 次々と並べられ、ジャック達は目を丸くした。見ているだけでも涎が出そうなほど、美味しそうな料理勢が視界一杯に広がる。 「では、召し上がってください〜」 年端も行かない女の子。優しく微笑んだ。 茶髪で短めのツインテール。愛らしい少女にポウは釘付けになる。 「ああ、あなたの瞳は丸くて美しいー、こうしてオイラは一輪の花に目を奪われ…」 「さーしゃ! こっちに来てー」 他のウェイトレスに呼ばれ、少女は忙しそうに去ってしまう。 スルーされ、硬直する妖精さん。 「ああ、その気持ち分かるぜ!」 デルサスとジャックは共に涙を流しながら、妖精さんの肩に手を置いた。
「今度はこれをA−5へ運んでー」 「空猫さん。は、はい!」 胸が大きめのスタイルの良い女性。にこやかに微笑み、手に持った料理勢をさーしゃと言う少女に渡した。 「はわわ! なんで空猫さんとさーしゃさんが?」 空猫の姿にルカが驚きの声を上げた。彼女はクロア達と一緒のレーヴァティル。空猫と知り合いのようだ。 「あらぁー、ルカじゃない。クローシェをミシャさんに取られて大丈夫? なんなら私が相手してあげますわ」 「い、いえー。それは結構ですー」 「残念♪」 その後、事情を言ってくれたのだが、なんでも前々からクロアたちの世界にもアリスと言う魔女がスカウトしていたって言う話だった。 空猫にクロアたちの動向を提供して誘い、さーしゃには生計と婆さんの治療の為に誘った。 「皆の為になると思っているから誘っているのよ。皆が喜ぶ姿を見たいしねぇ」 黒い風貌とは裏腹に営業スマイルで丁寧にスカウトしたの事。何故かプレゼンテーション方針を伝えてきた。 利益の為ではなく、相手を喜ばすための方針だと聞き、消極的なさーしゃも賛同して参加の意向を伝えたのだ。 アリスはまるでクロア達との繋がりを見透かしたかのように、関係した人々を誘っていたのだ。 「…全くだわ。さーしゃが来ているから驚いたわ。まぁ会えたからいいのだけれど」 気付けばルカと空猫にクローシェが来ていた。 クローシェはさーしゃと仲が大変良い。呆れたような言い振りだが、再開した事に喜びを感じているようだ。
その時、床に料理がぶちまけられた。 ざわめくレストラン内。クローシェは振り向くと、さーしゃが暴漢に絡まれているようだ。顔を青くする。 「やい、小娘がこの俺様に意見するのか! 我々はこの世の平和の為に考えている市民団体だぞ!」 「す、すみません。すみません…」 泣きそうな顔で何度も頭を下げるさーしゃ。 相手は天覧武術大会の開会式でアリスにケンカを売っていた鬼蛸族の二人組だった。 「これを賠償としてただで料理を持ってこい! 一番高級の奴をだ!」 「早くしろ!! 訴えるぞ」 脅すような怒声が飛び、怖気づく客。 鉢合わせていたうに魔女はその光景を目にして、唖然と口を開けていた。 さーしゃが苛められ、涙がぽろぽろ床に滴り落ちる。何度も謝っても謝っても怒声が止む事はない。 うに魔女は葛藤を抱き、その場に出ようとした。 「止めなさい!」 しかし、先にクロ−シェが前に出た。怒りを露にし、腰に下げたレイピアを引き抜き切っ先を突きつけた。 「公共の場で行われた無礼を御子の名において見捨てて置けません!」 「んあんだぁ? てめぇ。平和市民団体の俺様に楯突く気か、このアマ!!」 怖気づきもせず二人は床を踏み鳴らし、形相を見せた。 「そのような暴利。許されるはずがありません! それになんなんですか? その平和市民団体って言うのは暴力に任せてワガママを通す団体って事ですか?」 「うるせぇぞ! 平和市民団体といったから、我々は正義なのだ!」 「そうだ! 我々はアリスによって権利を奪われ、路頭に迷っている。その謝罪と賠償を行え!」 「御託やめなよッ! 女の子泣いているじゃないの!」 ルカも庇うように立ち塞がり両腕を左右に広げた。 さーしゃは泣き崩れ、床にぶちまけられた料理を悲しんでいた。空猫がしゃがみ込み彼女の背中を擦り宥める。 ざわめく客。異世界の人と暴漢のトラブルか、と戸惑う人もいるようだ。 「ああん? 異世界人か!? 我らの志よりも小娘如きを気にするなど、誠に遺憾の極み!!」 怒りに任せ、隣のテーブルを拳で叩き割った。更に料理が床にぶちまけられ、飲み物が零れ落ちた。 さーしゃはそれを見て、張り裂けるような悲しみを堪えきれず空猫に飛び込んだ。 「貴方達のような口だけの平和市民団体に言われたくありません!」 「そうだよ! さーしゃを苛める人が平和を求める人の発言じゃありませんっ!」 負けじとクローシェに続いてルカも反論する。 「このアマァ、ぶっ殺すぞ!」 拳が振りあげられ、ルカは「アッ」と口を開けた。その時、影がルカを覆った。鈍い打撃音が響く。 客は唖然とした。拳を振るった暴漢の二人も驚く。 床を滑りながら倒れ込んだのはルカではなく、うに魔女。 「ああっ、うに魔女さんー!」 ルカは駆け寄り、うに魔女を気遣う。頬を殴られ、口許から血が垂れていた。 どうやら鬼蛸族の暴力からルカを守る為に庇って殴られたようだ。クローシェもさーしゃも呆然とした表情でうに魔女を眺める。 客の一同も彼女に釘付け。 「…もう止めて。料理はだだでもいいから」 うに魔女は悲しそうな顔でそう告げた。鬼蛸族は引き下がった彼女に気を良くしたのかフンと鼻を鳴らす。 「始めっからそういやいいんだよ! ケッ」 そう言うと乱暴に料理を手掴みで口に入れた。くちゃくちゃと噛み締めながら人々を掻き分け、乱暴に扉を開けて出て行ってしまう。 「だ、大丈夫ですかぁ! あわわ、さーしゃの為に庇ってくれてごめんなさいです!」 さーしゃは涙を零し、何度も頭を下げる。しかしうに魔女は微笑んだ。 「いいの、気にしない! 泣かないで、あなたの笑顔で喜ぶ客もいるんだから…」 さーしゃの頭を優しく撫でて宥めた。さーしゃはそんな彼女の優しさに触れ、涙を溢れさせた。 「あ、ありがどう! すみませんでじた〜」 しゃっくりしながら何度も頭を下げた。近寄ってきたクローシェに抱擁され、泣きついた。 何度も悲痛な鳴き声が響き渡った。 うに魔女はそれを聞き、俯く。双眸を覆うように影が覆う。 「おい! 大丈夫か!?」 人々を掻き分け、クロア達が慌ててやってきた。ルカもそれに振り向く。 事情はルカから聞き、そしてこの場は何とか収拾して落ち着く事が出来た。
ホテルの広い入り口でクロア達はうに魔女を見送りにきていた。 「…すみません。うに魔女さん。もう少し早く来ていれば!」 クロアは悔いるように頭を下げる。 「いいのよ。気にしないで」 頬にガーゼを張られたうに魔女は微笑んだ。「しかし…」と食い下がらないクロアを掌で制した。 後ろに控えていたレグリスは寡黙に腕組みして彼女を見下ろしていた。 「…この問題は私がカタをつけるから!」 強い決意を見せ、鋭く輝く瞳にクロアとレグリスは僅かに見開く。 (こいつはただ黙っているような女ではないな…) うに魔女は静かに踵を返す。さーしゃは何か言いたそうに呼び止めようとした。しかし消極的な性格か黙りこくる。 それをクローシェは汲み取ったのか、少女の肩に優しく手を置く。 さーしゃは無言で俯く。 不安に駆られていたが、クローシェの温もりに安堵した。
冷たい風が吹く夜。満月が夜空から見下ろしていた。 うに魔女の脳裏にはさーしゃの泣き顔が浮かび、険しい顔のまま夜道を歩く。拳を握り、怒りを溜め込んだ。
あとがき
葛藤云々はさておいて、アルトネリコのキャラが猛威を振るい始めてきたなw
さーしゃはアルトネリコ2に出ていたサブキャラの一人。クローシェと大の仲良し。結構頭が良かったりする。 本当にいい子なので、悪党の悪事に巻き込ませるのは心が痛むんですけどね。むむー(汗
うにうにw
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| 299話 「再びの天覧武術大会」 | 2009,6,19 |
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299話 「再びの天覧武術大会」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
グラムナート大陸最大の活火山であるボッカム火山が赤く膨らんでいた。まるで怒りを堪える頑固親父のようだ。 ついに耐えかねたのか、怒りを爆発させるように大噴火! その時、アリスの眼光がキラリーンと輝いた! ハイテンションな振る舞いで腰を上げ、天に向かって指さした。 「天・覧・武術大会開催よぉ〜〜〜〜!!」 側にいたアイゼルはビクッとたじろいた。 「あーっはははははははは!!!!」 気が動転したように、ハイテンションのままアリスの哄笑がいつまでも響き渡っていた。
★ グラムナート大陸のフィンデン王国の首都メッテルブルグ。相も変わらず都会様相。 だが、いつものより人通りが多く賑やかになっていた。 空には花火が打ち上げられ、轟音が響く。 祭りの喧騒。たくさんの人を掻き分け、親子のように少年と少女の手を繋いだ娘ははしゃいでいた。 「フェルト兄ちゃん! 天国で天覧武術会だってー!」 黒髪の流れた幼女。丸い瞳が特徴で服装は簡易的な白い神官のような出で立ち。年頃が16歳以上の少年と少女の二人の間で、娘のように明るく振舞っていた。 「あなた、せっかくだから参加してみたら?」 茶髪のショート。顔立ちは整っているが、美女でもブサイクでもない普通の顔。だが優しい笑みは女神を彷彿させるものだった。 やや赤めの栗色の服。露出を抑えるようにスカートの上に膨らんだズボンを覗かせている。 「いやぁ…、剣を振るうのは好きなんだけど」 サッパリした銀髪。爽やかな笑みをもたらす心地良さそうな少年。少女とは対照的に服装は蒼い色調。多少身軽で腰にはアゾットが差されていた。 「兄さん優勝して、ヴィーゼお姉さんに婚約指輪をプレゼントするのー! そしてパパとママって呼べるー!」 「やだ、イリスったら…!」 天真爛漫なイリスの言葉に、ヴィーゼと言う少女は頬を赤らめさせた。 思わずフェルトは顔を赤くし、目を背けた。 「…ん、それが目当てはないんだけど腕試ししようかな?」 「あはは。フェルトらしいね。頑張って! 私たちも応援するから」 「お兄ちゃん優勝! ふぁいとー!」 二人に檄を飛ばされ、少年は照れ気味に後頭部を掻いた。
参加受付場で人々は集まっていた。うに魔女はその中でキョロキョロと見渡す。 「なんだ、お前も参加するのか?」 声が聞こえ、振り向くと日本侍風の出で立ちをした人間型の福餅族が目に入った。思わずうに魔女は目を丸くした。 「モ、モモタロー!! なんでここに?」 「…なぁに、ちょっとくら腕試ししようと思ってな。お前と当たっても容赦はしないぞ」 腰に差した日本刀を見せびらかしし、不敵の笑みを浮かべた。 うに魔女は思わず苦笑い。 「おお、久しぶりだなぁ!!」「うに魔女じゃないか!」 また声が聞こえ振り向くと、デルサスとマレッタが快い笑顔でやって来た。その後ろから猫娘がひょいと姿を現す。 「デルサス、マレッタ、ノルン! ずーっと会ってなかったけど、久しぶりじゃない!」 「…ああ、アリエルっぽい人が主催者らしくてな。真相を問い質したくて優勝を狙っている訳さw」 かんらかんらとデルサスは豪快に笑う。 「お前では無理だろう。ともあれ、アリエルの気配があちこちに移ったり、微妙に気の質が変わってたり、気になっていたんだ。 だが、アリスと言う女性の活躍を聞きつけて馳せ参じた訳だ。これで奴に礼をキッチリ返せる」 「そ、そーなんだ」 うに魔女は苦笑いで返す。しかし彼女はうに魔女とアリエルが融合したアリスの分身でもあるホムンクルス。従って記憶も受け継いていた。 前の歴史で記憶喪失になったアリエルの世話をしていた。 狂ったマレッタを静める為に戦った結果、記憶を取り戻してセフィロトで彼女を救った。その後、何も言わずに別れた。 恐らく、その事の礼を言う為に追っかけていたのだろう。 「ノルンも参加するニャー!」 主張するようにノルンは杖を掲げ、尻尾を振る。 「え? あんたも!?」 思わず瞬きするうに魔女に、ノルンは膨れた。 「当たったら、新しい技で倒すにゃー! 覚悟するにゃ」 「あはは、その時は容赦なく手合わせするね!」 うに魔女は笑顔で返したが、ノルンは身を竦ませ、後退りし始める。当の彼女は首を傾げる。 ノルンにとって、うに魔女が本気を出す事は脅威に感じていた。数々の強敵を破ってきた功績が背後から輝いているように見えたのかもしれない。 「…ひ、退くのなら今の内にゃ…」 ビクビクしながら減らず口を叩くが、少し涙目だ。 「おーい、お前も出るのかー!」 なんか自分を見知った人が多いような気がして、少々うんざり顔で振り向く。しかし途端に見開く。 「あ、ライナーだ。しかもクロア達も…」 例のレーヴァティル達を守る別世界の人たちだった。 面子からしてライナー、ジャック、クロア、ココナ、レグリスの五名が参加するようだ。 「さっきは世話になったな」「うに!」 うに魔女とライナーは握手を交わす。 「…知り合いか?」 マレッタの問いにうに魔女は振り向いて頷く。 「なんでぇ、なんか知り合い増えてるじゃねーか」 ジャックはデルサスと言う人柄に触れ、同じ物を感じた。同様にデルサスも彼の視線に気付いた。 「おお、同志よ!」 何故か昔からの友人のように二人は握手を交わした。 「な、なんなんだ…」 呆れるマレッタに苦笑いを浮かべるうに魔女。 「こらー、苦笑いは俺の専売特許じゃないの」 聞き慣れた声に振り向くとマッキーが挨拶代わりに手を上げていた。 「あら、マッキーじゃない! なんか少し逞しくなってない?」 「へへ、この大会で武者修行の成果見せてやるからな」 マッキーは不敵に笑む。 デルサスもマレッタもマッキーの肉付きや戦いを潜り抜けた特有の雰囲気で、彼が強くなってきている事を察した。 (お前より強くなってるかも知れんぞ) マレッタは肘打ちして耳打ち。デルサスは少し引きつった。 その側をツインテールの少女が通り過ぎた。両手には朱色の鎌のような武器が握られていた。
「よぉし! 目指すは優勝よォ」 ハイテンションで力む血気盛んなうに姫と、オドオドしているくり王子がいた。 「ボ、ボクは…怖いから見るだけにしたい…」 「さぁ、一緒に参加しましょォ――!」 うに姫に手を引っ張られ、くり王子はこいのぼりの様に浮いた。泣き喚く最中、強引に参加させられてしまった。 「おし、このアタシ達も参加して天国でも名を上げるわよ!」 活発な武道娘、銃を背負った可愛い妖精さん、そして龍の風貌の大男。 「やれやれ、ノインは相変わらず元気がいいな。しかし天国ってのは随分印象が違う。死者が行き着く所だと思っていたんだがな…」 メッテルブルグの喧騒を見渡しながら竜人は息をつく。 「ふっ、鬼嫁から離れら…じゃなくて、このボクの力をヴィーゼに見せ付けてやるんだいっ!」 三角帽子をかぶった子供みたいな風貌なのに軟派男みたいなキザな台詞とポーズを決める。 「…フェルトも参加するかもしれないね。フィーも一緒に来ているはずだし、確実なのは竜人のグレイと妖精ポウか。」 ノインは人込みを見渡した。
★ 賑やかに歓声を上げる観客が集うコロシアム。 「遠路遥々ご苦労さぁん」 上の目線でアリスは主催席で、会場の選手達を見下ろした。 只ならぬ威圧が静かに伝わり、選手一同は息を飲む。 創世界の覆せぬ独裁政権を握っていたテチャックを打ち倒したと言う英雄。その噂も手伝ってか緊張が走る。 (あれが…ホノモンの悪女って感じで萌えるぜ) 蒼いうに頭が目立つ長身の好青年。彼はセロット。軟派男で無償の女好き。アリスの雰囲気に心地よい寒気を感じていた。 アリスはそれに勘付き一瞥するが、構わず言葉を続けた。 「優勝したら…『慈愛の贈り物』と『英雄の称号』を象徴するプレゼントを選ばしてあげる。どちらか一つしか選べないけど、本人にとって至上のものとなるでしょう。参加してくださった皆さんのご健闘を祈るわぁ。ふふふ…」 最後に妖しい含み笑いで主催者の言葉を締めた。 選手の誰もが思った事を一致。 (思いっきり怪しいっ!)
「アリスゥ――ッ!!」 選手の中から声が飛び、踵を返そうとしていたアリスは半顔で振り向く。 ざわめく観客。 なんとヤクザのような強面で巨躯の鬼蛸族の二人組がふてぶてしい態度で前に出る。上半身は鬼だが、下半身は蛸の足。奇妙な容姿に誰もがおののいた。 肩にかずいたトゲの付いた金棒をアリスに向けた。 「…我々はテチャック様を支持していた平和市民団体。悪である貴様のせいでこの世の平和は乱れた! どちらが正義かを思い知らせるべき、大会に参加する事となった。優勝すれば、我々だけ特別として特権を寄越せ!」
「さて、どれくらいの人が予選を勝ち抜けるのかしらねぇ?」 冷たい眼差しで含み笑う。まるで眼中にないと言わんばかりな態度だった。 「てめぇ! 重罪人ごときが王様ぶってんじゃねー!」 ヤクザのように睨みを利かせ怒鳴った。 「じゃあ半刻程で予選が始まるから、その間に準備を済ませておきなさぁい。それじゃねぇー」 しかしアリスは何も見なかったかのように、手を振りながら背中を見せつつ去っていく。 (クソ…、いい気になりやがって! 救世主であるテチャック様を殺した罪を絶対に償わせてやる!) 悔しくて溜まらず、地団駄を踏む。 他の選手達は怪訝な目を注ぎながら離れていく。うに魔女だけ、二人組を眺めていた。 哀れみを込めた眼差し。 (ただの乱暴者に見えるけど、彼らにとってテチャックが支配する世界は平和だったのかもしれない。それを私達がぶち壊した…) どこか後悔しているような表情を見せる。
(ったく、また悪い癖出てるわねー) 主催席でアリスの側にいるアイゼルは溜息をついた。
あとがき
日常的な話で何気にコッソリ伏線を回収してたりしてーw デルサス達の登場のタイミングに困っていたので、この話を機会に出しちゃいましたw それからアルトネリコのキャラ登場時に出てきたフィーと言う少女の伏線もこれで回収w イリス2のキャラも参戦でスw 幼女のイリスがフェルトをパパと呼び、ヴィーゼをママと呼ぶ妄想すると、何だか家庭的だな〜ってw(マテw
うにうにw
うにうにw
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| 298話 「マッキーの苦笑い」 | 2009,6,18 |
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298話 「マッキーの苦笑い」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
グラムナートの平和を象徴するように澄み切った青空が見渡せる。 緑が生い茂り、透き通った水が流れる川。
しかし、そんな平和な日々にも僅かな災いは起きていた。 布を切り裂くような女の悲鳴が森の中から響いた。 二人の影に覆われ、脅える一人の女性。 ショートヘアで茶髪。衣服は錬金術士。杖は近くに転がっている。 「うっへっへ〜、奪ったもん勝ちだぜ〜w」 下卑た表情を浮かべる二人の盗賊。ムサい顔で中肉程度の筋肉質だが、身なりは汚い。 どうやら採集している時に盗賊に出くわして、女性は迎撃も敵わぬまま襲われようとしていた。 「これで俺達は脱童貞だぜ!」 「ああ、この物語でのレイプ成功率は限りなく0だったんだが…」 涙を流し、感動する二人。 恐る恐る女性はその場から逃げ出そうとする。しかし盗賊の目はそれを見逃さない。 「…というワケで頂きま〜すw」 「いや〜〜〜〜! 止めて〜〜!!」 獣心を丸出しに飛び掛る二人に女性は悲鳴を上げた。
しかし刹那の閃光。剣の軌跡が薙ぎ、二人は血飛沫と共に地面に転がる。 「大丈夫か?」 「わ、いい男w」 女性は瞬きし、口許を両手で覆う。 整った顔立ち、ピンクが掛かった髪の毛。白い紳士服のようなものを着ていて、長剣をしっかり握っていた。 彼の顔の周りにキラキラ眩くものが、女性は見えた気がした。 (これって運命の…、王子…様?) 「ロードフリードさん! って盗賊!?」 その場の雰囲気をぶち壊すように緑の衣服を着た錬金術士と銀髪の子供が森の茂みから現れる。 「…ああヴィオ、勝手に飛び出して悪いな。何か気配を感じたからね」 ロードフリードは笑顔で振り向く。 「うん。気にしないで。やっぱロードフリードさんって昔っから頼りになるねー」 「いや…、ヴィオの錬金術と比べれば僕なんて大した事ないよ」 明るく笑いあう和やかな雰囲気が包む。 二人のラブラブ感が見えてしまった女性は勝手に傷心状態。ついでに放心状態に陥り硬直。 それを眺めていたマッキーは苦笑いを浮かべた。
ヴィオの兄であるバルトロメウスは首都ハーフェンで別れ、中途で出会ったロードフリードが快く道中の仲間に加わってくれた。 流石に騎士鍛錬上で訓練を受けて卒業しただけあって、かなりの腕前で大半の敵を軽々と退けていた。 爽やかな好青年と言う印象がマッキーに映る。 「っても錬金銃って興味深いね。飛ぶのは弾丸じゃなくて、ヴィオと同様の錬金術だそうだし」 「そちらこそ、卓越した剣技は下手な錬金術よりはずっと役に立つよ。お陰で助かってる。」 「ははは、接近戦で当てなきゃならないけどね」 対等の立場とも言えるように、青年と子供が話し合っているのを見て、ヴィオは意外そうな顔をした。 しかし仲良くやっていると言う点を見て微笑んだ。
森の中を進んでいると、再び盗賊の群衆と出くわす。 「てめぇら! この物語が十八禁だからレイプ不可能ってふざけんなよ!」 「おう、そのおかげで俺らは童貞のまんまで三十路に…。ぐぅっ!」 意味不明な事を口走る盗賊に、三人は素っ頓狂な表情で瞬きする。 「…だからよ! ウサを晴らさせてもらうぜ!!」 苛立ちを払拭する為に、怒気を孕んだまま盗賊は一斉に飛び掛る。 途端に、ロードフリードとヴィオとマッキーは表情を引き締めた。 剣閃が幾重に描けば数人の盗賊を地に伏せ、何発か光線が間を縫って、一人ずつ爆炎に包んでいく。 「えーいっ! ブリッツスタッフ!!」 ヴィオの振り下ろした杖から吹雪が吹き荒れ、生き残っていた数人を纏めて氷結に閉じ込めた。 三人の息のあったコンビネーションによって瞬時に盗賊の集団を黙らした。 「こいつ等…、つえぇ……」
「…近いわね。テュルキス洞窟が」 ヴィオは唇を舐める。 「テュルキス洞窟?」 「ああ、盗賊団の巣窟さ。よくヴィオが狩りにいっているよ。初めての時は危ないと思っていたんだけど、今じゃ咎める理由もないよ」 マッキーの問いにロードフリードが振り向きてがらに答える。 「…狩りってw」 思わず脳裏にうに魔女が浮かび、苦笑いする。
見た目は洞窟だが、入ってみれば内部の作りは人工的に近かった。 色々回っていくとベッドが並んでいたり、倉庫の箱が積んであったりと生活感が窺えた。 ヴィオが行く先の宝箱を漁る姿を見ては苦笑いを浮かべざるを得なかった。 「んじゃ、最後の部屋で究極の用心棒さんをブッ倒して武具とか貰いにいこーねー」 明るく微笑みを振り撒くヴィオ。 傍目で見れば普通の女性の笑顔だが、台詞は何だか物騒に聞こえた。マッキーはまた苦笑い。 (うに姉さんもあんな感じだもんなぁ…。なんだか一緒にいるみたい) 群がる盗賊団を蹴散らしながら、奥の突き当たりに行くと立派な広間に出る。 装飾が施された白い壁が目に入る。 そして数人の身なりの整った盗賊と、椅子に腰掛けている頭領。そして側にいる用心棒らしき長身の男。 まるで敵の布陣へ切り込んだような錯覚を受けた。 「…また貴様らか!」 嫌そうに顔を歪める頭領。 「正義の為にあなたたちを倒させてもらうわ!」 ヴィオはノリノリでびしぃっと指差す。目の奥には煌びやかな財宝が映っているとしか思えない輝きに満ちていた。 「何だかなぁ…」 「僕もマッキー君と同意だね」 苦笑いするマッキーにロードフリードも溜息てがらに頷く。 しかし奥に控えている用心棒の鋭い眼光に、マッキーは息を飲んだ。 (奴だけ、威圧が違うッ…) 離れているだけでも肌に微かに響く。 ロードフリードも感じ取ったのか、険しい表情のまま剣の柄に手を添えていた。 「やっぱり、究極の用心棒さんレベルが上がってるわね!」 ヴィオも不敵に笑っているものの、頬に一筋の汗が垂れていた。緊張に強張っているように杖を握ったまま身構えている。 (彼女も感じ取っているんだ。良かったよ。相手の実力を見誤る自惚れた所がなくて) 三人の百戦錬磨の風貌を感じ取ったのか、用心棒は軽く笑う。 「貴様ら、一体どこまで荒らせば気が済むのだ! 我々だって生活が掛かっている。それなのにお前らときたら…」 さっきから頭領は文句を喚いていたが、用心棒と三人の耳には入っていない。 この空間は既に四人に支配されていた。 「あの、頭領。ガチでスルーされていますが…」 申し訳なさそうに一人の盗賊が後頭部を掻く。 「ぬぁんだとっ! ええい、やっちまぇ!!」 怒り心頭! 頭領は剣を振り下ろし、号令をかけた。それが戦闘の合図となる。 一斉に盗賊たちが得物を振りかざして殺到する最中。 「ロードフリードさん、ヴィオさん。後ろへ下がってっ!」 マッキーの叫びに合わせ、二人は瞬時に後ろへ飛び退く。その様子に盗賊たちは違和感を抱いた。 既に少年の両腕は十字にクロスさせ、両手には銃が握られていた。 (逃げ――?) 用心棒は何か危険なものに気付き、自ら羽織ったマントを剥ぎ取り、剣を振りかざす。 「荒れ狂えッ!! 大烈斬エアロナーゲル!!!!」 マッキーは極限に溜め込んだ精神力を二丁の銃に流し込み、交差させていた腕を広げ、引き金を引く。 広間を震撼させんばかりの轟音と共に、風の刃が数十発放たれた。 いくつかが虚空へ消えるも、残りの刃は本来の威力を維持しながら広間を切り刻む。盗賊の集団は悲鳴を上げる。 ヴィオとロードフリードは大盤振る舞いの技に目を丸くする。 「ぐ…うぅッ!」 マッキーは呻く。体中が引き裂かれ、破裂しそうなほどに激痛が走る。そして急激な脱力感。途切れそうな集中力を必死に引き止める。 (…ムルの結晶やうに魔女が何食わぬ顔でやってたけど、こんなにもキツイ技とは…ッ!) 派手に洞窟を吹き飛ばし、出っ張っている丘が衝撃波の噴火によって倒壊。
煙幕が漂い、岩の破片が舞い落ちる。洞窟の中だった広間は、広く大きな風穴が開き、大空と森を一望できた。 盗賊達は既に地に伏し、立っている人はいない。 マッキーは荒い息を切らし、膝を手で押さえて必死に立ち堪えている。 「大丈夫…?」 心配そうにヴィオは駆け寄る。 ロードフリードは眉を跳ねた。すぐさまマッキーとヴィオを守るように立ち塞がる。 「うおおおおおおおおおっ!!」 剣を翳していた用心棒を中心に、真空波の渦が膨れ上がりながら煙幕を吹き飛ばした。 「…末恐ろしいガキだ。真空波を放つヴァキューム・ヴォレがなかったら、私は殺されていた」 焦燥を帯び、用心棒は剣を構え直す。 マッキーは絶句。 (不完全とは言え、あんな大技を凌ぐなんて…) どちらか言うと敵の凄さよりも、自分のレベルの低さに絶句した心情だった。 解き放てば、どんな敵も微塵に帰すほどの威力。達人が放てば城くらい粉々に吹き飛ばせるほどだ。 なのに、本来の威力を半分も引き出せていなかった。マッキーは痛感する。 「つっ!」 構えようとするが、激痛が走る。 (あれは一時的に身体のセーブを取り除いて解き放つ技だから…、うに魔女も戦闘ではほとんど一発しか放ってない。いや、放てないんだ。身体への負担が大きすぎるから…) 「ここは僕たちに任せろ」 「うん、そうだよー。ちょっと驚いちゃったけど、ありがとね」 ロードフリードとヴィオが笑みかける。 すると用心棒は身を揺らがせ、掻き消えた。同時にロードフリードは軽やかに身を翻しながら剣を振るう。 「アインツェルカンプ!!」「アインツェルカンプ!!」 二人の剣が交錯。幾重の剣閃が踊る。残像を残しながら共に二人は攻守の捌きを繰り広げていた。 その都度、ヴィオが攻撃を挟みフォローを忘れない。あらゆる錬金アイテムを次々と繰り出し、用心棒を追い詰めていく。 既に跪いていたマッキーは戦況を眺めるしか出来なかった。 (…やっぱ俺は戦力になれないよなぁ。用心棒も、ムルの結晶とそれに互角に戦えた頃のうに魔女にすら及ばない。しかもこっちは三人掛かり) 既にマッキーの大技で満身創痍だった用心棒は次々と手傷を負い、動きが鈍くなっていく。 それでも油断することなくロードフリードは彼の剣を押さえ切り、止めにヴィオの繰り出すアイテムが炸裂。 「クソ…、新たな仲間か…? あのガキのせいで私は…」 そう言い残し、ついに地に伏す。 (それでも、彼の実力は本物だ。地上最強と謳ってもいいほどの強さなんだよな) 力尽きた用心棒を眺め、マッキーは口を窄めた。
陽が沈む黄昏の最中、三人は長く伸びた影を引き連れながら草原を歩いていた。 「大漁♪ 大漁♪」 たくさんの武具や財宝が詰め込まれたリュックを背負い、ヴィオは軽い足取りで帰路についていた。 溜息混じりに首を振るロードフリード。 「全く、女ってのは逞しいもんだな。ヴィオだけかもしれないけどね」 「そ、そうかなー?」 マッキーは苦笑いを浮かべた。脳裏にうに魔女やアリエル達が浮かぶ。 橙だった空は少しずつ青紫に滲みながら暗くなっていく…。
あとがき
久々にゲームプレイ感覚で書けましたw やっぱ荒らしに行くよネw あそこ。 究極の用心棒は倒せば倒すほどレベルが上がって強くなる。でも貰える武具も立派なものになっていく。 そうやって一攫千金を何回もやってお金持ちにしたプレイヤーも多いかもしれませんネw
流石に大陸破壊クラスには遠かったか…。 思えばユーディーのアイテムの威力はどこまでも伸びるんだったっけ? 万単位にも出来る方法があるとか…? 大陸破壊クラスに達するにゃ、万単位のダメージを通常攻撃で出来るようになるって目安でいいかな?(笑
うにうにw
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| ロヒの姿を『拝見』したッ!! | 2009,6,17 |
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下の漫画を読む前に言っておくッ! おれはロヒの姿をほんのちょっぴりだが拝見した い…いや…拝見したというよりはまったく理解を超えていたのだが…… ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ (.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 見た事を話すぜ! |i i| }! }} //| |l、{ j} /,,ィ//| 『おれはロヒを『ニワトリ』だと思っていたら i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ いつのまにか『ユリ』になっていた』 |リ u' } ,ノ _,!V,ハ | /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが /' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何を見たのかわからなかった… ,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉 |/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった… // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 変身だとか妖怪変化だとか / // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ } _/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… |
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| 297話 「懐かしのグラムナート!」 | 2009,6,13 |
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297話 「懐かしのグラムナート!」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
雲の地面を少年の二つある足が歩き、そしてその足が止まる。 「ふう、数ヶ月ぶりだよー」 マッキーは息をつく。 彼が目に納めているのは雲の大地に埋め、広大な丘になっているザールブルグ大陸。 そしてグラムナート大陸も錬金大戦時に合体していたので、一緒に繋がっていた。
町を転々としていたマッキーはカロッテ村に行き着く。 村と言うには些か違和感があるほど、人々の通りは多い。ある錬金術士の女が村を大きくしたからだ。 村の中心には巨大なニンジンが建てられていた。
★ マッキーはカロッテ村の"月光亭"と言う酒場のある一室で簡易調合を行っていた。 旅をする錬金術士の為に錬金室を設けてあったのだ。 ある彼女もここの出身の錬金術士である為か、酒場の主は理解がよかった。 次の旅に困らないだけの量が図鑑に入っているのを確認すると、一息をつく。 「錬金銃の弾丸作成も結構骨を折るや」 主に終わりを告げようと部屋を出る。 「オッフェンさーん、依頼のもの持ってきましたーっ!」 元気の良い活発娘が手を振り上げながら入ってきて、思わず面食らった。 「助かるよ。なんせ、君は村一番の錬金術士だからね。ヴィオがいるだけで村は潤ってくる気がするよ」 「えへへー、やだなぁ照れるよー」 緑色調のエプロン娘。茶髪で結構体つきは良い。笑顔は明るくてアイドルになってもおかしくないほど輝いていた。 彼女は巷で人気者のヴィオラート。 うに魔女の義妹であるVIOの媒介となっていた女性。 かつて、アリエルの企みによってVIOと言うトリスメギストスを憑依させられ、世界を大寒波に陥れようとしていた。 しかし四輪羽、晴天の妖精に進化したうに魔女によって、その危機は止められた。 今では普遍的な日常を活発に過ごす普通の娘である。 錬金術士なので普通と言うには疑問かもしれない。だが、過酷な道を歩んでいるうに魔女よりはずっと普通だ。 「普通の日常かぁ。悪くないんだけどね」 マッキーは傍目でヴィオを眺めながら、そ知らぬ顔で酒場を出ようとした。 「そいつも子供の癖に立派な錬金術士だそうだぜ?」 マスターの主も結構目が鋭いせいか、ヴィオにその事を告げた。マッキーも思わず肩を竦ませた。 「えーほんとぉ!? 最近、他の錬金術士に会ってないんだ。話してみるねー」 そう言うと主に微笑みかけてカウンターから離れた。 「はは…。どうも」 ドギマギながら振り向くマッキー。ヴィオはしゃがみこみ、少年の顔を覗き込む。 「へー、小さいのに立派な錬金術士なんだね」 「…小さいのは余計だよ、ったく」 しかめっ面するマッキーにヴィオは微笑み、ごめんと謝る。
★ ウサギの耳が跳ね上がる。 「うさっ! 姉のトコのマッキーじゃないですかねぇ――!」 「VIO…、何でここに?」 ぱちくりとマッキーはヴィオの家の中に居候していたVIOに唖然としていた。 「ウサちゃんと知り合い?」 ヴィオはマッキーに振り向き、首を傾げた。 「ウサちゃんって…」 「うん、ウサギっぽいでしょ? ニンジン喜んで食べてくれるし、色んなニンジン作ってくれるしーw」 満面の笑顔でVIOの事を紹介してしまう。 「そ、そんな大した事ないねぇ…」 ツンデレのように目を逸らし、頬を赤らめていた。 マッキーは苦笑いしながら二人の関係を察した。 (そうか、この二人相性がいいんだもんね。ニンジン好きで気が合わない方が不思議だし) 部屋を見渡すとヴィオの部屋は結構広い。前方に店の特徴として品物が並んでいる棚がいくつか。その後ろに錬金釜やその関連器具などがおかれていた。 頻繁に使っているようで大分汚れている。 VIOを小さくしたようなウサコがとことこ所狭しと歩き回っていた。 (…なんかうに魔女のうにっ子を彷彿させるなぁ) 「ウサちゃんはあたしの親友なの! ちゃんと極上品の錬金アイテム作れるし、採集も早いし、何よりウサコちゃんが色んな役割務めているのよ。お兄ちゃんよりずっと役に立ってるもんね!」 「っていうか、オレの部屋を全てニンジン畑にしたのも、さてはそれが原因からかよ!」 二階から黒髪の青年が飛び出すように叫んでいた。 「もぉ、村が大きく発展したのにブラブラとニートやってるからでしょ! 生活費は誰が稼いでいると思ってるの? 大体、あたしが充分に儲かっているからお兄ちゃんも安心して遊べるけど。堪忍の尾切れちゃうからねっ」 手首を腰に当て、頬を膨らませながら叱責するヴィオに、流石に兄貴も萎縮して縮こまっている。 シビアな叱責の内容にマッキーは引きつった。 それでもちゃんと自分で生活をしていると言う確かな基盤だと言う事を表していた。 天下のカカアのようにヴィオは威厳のある態度でふうと一息を就いて一区切りする。 「それじゃ、ウサちゃんに留守を任せて一緒にカナーラント王国の首都ハーフェンへ行くわよ! 準備なさーい!」 ぴしゃりと言われ、尻に敷かれる様に兄貴はすごすごと奥へ引っ込む。 マッキーはある闇の側面を見たようで更に引きつっていた。 ヴィオは向き直り、微笑む。 「あなたもよければ頼まれてくれる? もち、賃金払うから♪」 「う、うん…」 思わずマッキーは頷いてしまっていた。 さっき窺ってしまった威圧に圧されたのかも知れない。何故か萎縮して身体が勝手に動いてしまったのだ。 「留守はこのVIOの名にかけて守りきるねぇー!!」 ウサギの耳を跳ね、キラリーンと眼光を光らせながら挙手した。
★ 木々が疎らに生えている、のどかな草原。青天の太陽。 「エンゲルスピリッツ!!」 ヴィオの振り下ろした杖から、白い渦が吹き荒れ、目の前の熊を伏させる。 その隙を突いて切り株のオバケが数匹飛び掛る。 マッキーはそれを逃さず、銃口を向けた。 「錬金銃・クラフトブリット・ワイド!」 三つに分裂した弾丸が切り株のオバケを一蹴。 最後に、岩を割る勢いでヴィオの振り下ろした杖の一撃が、残った狼を打ち伏せた。 「ありがとw 頼りになるねっ」 ヴィオとマッキーはパンと掌で叩き合った。
兄貴は申し訳なさそうな表情のまま剣を握っていた。 「ブラブラ遊んでいるから鈍っちゃうのよ! もぉ、せっかくあたしが切り盛りして励んでいたのに、今まで何をしてたのかしら」 「悪い…、面目ねぇ…」 旅をしている間、ヴィオの兄も剣を全く振るえなかった訳じゃない。 どうしても決定打に欠ける太刀筋ばかりで、引っ込んでいた方が助かるぐらい足手まといだった。 (っても事実、ヴィオさんの杖の一撃の方が兄よりもキレがあったなぁ。一撃で狼の頭蓋骨砕いてたし)
ようやく首都のハーフェンに辿り着き、ヴィオはある用事でどっかへ行っていた。 兄は突き出たレンガに腰を下ろし、肘を膝に置き祈るように手を組み、思いっきり顔を項垂れさせていた。暗い影が周りに立ち込めるほど凄く落ち込んでいた。 マッキーはそんな彼を気の毒に思ってしまう。 「気にしないでよ。妹も心配しているから言ってるんだと思うよ。また剣の素振りを始めれば勘を取り戻せるんじゃない?」 「はぁ〜〜、そんな気楽に言うなよ…。妹は遊んでても一生過ごせるほど億万長者だぞ。それなのに未だに経営を頑張っているしな」 妹と自分を比べたのか深い深い溜息が漏れた。 「そりゃ錬金術士だからねー。向上心はあると思うよ。それに彼女の頑張りも戦いぶりから見て実感持てるし」 マッキーは苦笑い。 「妹に対抗するように錬金術習ったら?」 その言葉に顔を上げ、枯れたような表情を見せた。思わずマッキーは「うわぁ!」と驚いて飛び退く。 「……お金持ちになれる方法を、俺が気にならないとでも思ってるのかよ」 「って事は…」 「ああ、信じられねぇぐらい複雑すぎんだ。俺の頭なんかに入るかよ…」 再び顔を埋め、深い溜息。 考えてみれば錬金術は複雑な製法で持って、新たなる物を作る技法。 ちょっとした興味だけではすぐに頓挫して止めるのがオチだ。 なにかしら強い意志で目的を目指さない限り、長く続けられない高等な学問。 (そっか。ヴィオは寂れた村を切り盛りしようと、自分で店を経営する為に錬金術を学んでいたっけ。オレもうに魔女を救いたくて賢者の石作ってたなぁ。父の才能を受けづいているからこそだったのかもしれない。うに姉さんのは一緒にいるから動機は分かるけどね。 思えば錬金術もそんな簡単じゃないよな。当たり前のようにやってるから簡単だと思ってるだけで、一般人にはとても理解が難しい) 「うーん、どうしたものかな」 落ち込む兄を、腕を組みながら見下ろす。 「うう、もっと金があったらロードフリードと共に騎士鍛錬所に通ってたのによ…」 (ふうん、騎士にでもなりたかったのかな? …ん?) ふと気づいた事に首を傾げる。 「ねぇ、今は余りあるほど金に困っていないでしょ? それで通えばいいんじゃw」 マッキーの言葉に、唖然と大きく口を開いていた。 時間が止まったかのように、しばしの硬直。 「そうか…、何で今まで気付かなかったんだろうな」 別の意味で落ち込み、マッキーは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「お兄ちゃん!」 ヴィオの声に振り向くと、明るい笑顔で手を振りながら駆け寄ってきていた。 何故か騎士も一緒だ。 マッキーとヴィオの兄は訝しげに首を傾げた。 「お兄ちゃん。騎士鍛錬所へ来てもいいって、騎士さんから許可をもらってきたよーw」 満面の笑顔で兄に向けた。兄はしばし呆然と妹の笑顔を眺めていた。 (そうか。首都ハーフェンへ来たのもこのために…?) マッキーは見開き、ヴィオの意図を察した。 近くにまで来た騎士は彼を見下ろし、品定めするように何回か頷く。 「ふむ、これは中々の体格だな。充分に鍛え込めば騎士になれるかも知れんぞ」 「へ…? あ、ああ?」 兄は瞬きする。まだ状況がよく飲み込めていないようだ。 「もぉ、お兄ちゃん。あれほど行きたがってたんでしょ? 今なら財産は充分に有り余っているから!」 「…でもよ、妹の金で行くのも情けない気がするんだよ」 ネガティブなトーンで俯く兄に、ヴィオは頬を膨らませる。 「このまんまの方が迷惑よ! 今までの分を取り返せるように頑張っていけば、それでいいでしょ? ね」 悲観的な兄貴を諭すように叱責し、笑顔でウィンクする。 妹の優しさに兄は思わず胸が熱くなってくる。思わず涙が出てきそうで腕で隠すように擦る。 吹っ切れたのか、急に立ち上がる。 「ッバッカヤロー!! 騎士になるどころか、聖騎士にクラスチェンジしてやるあぁぁぁぁ!!」 溢れる涙。空に向かって絶叫する兄。微笑むヴィオ。 マッキーは呆然としていたが、次第に綻んでいく。 (なんだかんだ言っても二人は仲良しな兄妹なんだなー。これなら心配はいらないね) 「ここなら男子寮があるから、騎士になるまで家に帰らないでね」 明るい笑顔とは裏腹な一言で、背景のトーンは一気に真っ黒に。絶叫したままのポーズで兄は硬直。
別の意味で涙を流しながら、騎士に連れ去られていく姿に哀愁が漂っているように思えた。 「サボり癖直すにはこれくらいが丁度いいでしょ。ったくサボると碌な事にならないからね。お兄ちゃんは。」 「はは…、頑張ってね〜」 マッキーはただ苦笑いしながら、兄を見送った。
あとがき
うぃーっすw ヴィオを久々に書いて見ましたーっw
ヴィオの兄の名前はバルトロメウスですw 名前が出る機会がなかったので、そのまま兄を引きずる事になったけどw 久々の日常編っぽいネw 今まで世界を救う的な展開が多かったので、なんか新鮮だーw
うにうにw
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| 296話 「暁の浄土とマッキー」 | 2009,6,8 |
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296話 「暁の浄土とマッキー」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
鬼蛸族の残党。三メートルの大男に二メートル近くの二人。いきり立って目の前の少年に殺気を向けている。 棍棒やバットなど原始的な武器を振るい、木をへし折り、地面を穿つ。 少年は身を翻し、ことごとくかわす。 彼は白銀の銃身に金の装飾が施された短銃を手にしていた。 「錬金銃・ヴィラント・フレイム!」 引き金を引き、噴き出した火炎の奔流が一人を呑み込み、黒焦げに伏す。 「このぉッ!!」 その隙を突いてバットを投げつけようとした。が、少年は体勢を整え銃口を素早く向け直す。 少年の敵を刺す視線と鬼蛸族の焦りの視線が合う。 「錬金銃・メガフラム・ブリッド!」 轟いた爆風が一人を呑み込む。 「グゥゥゥ――ム」 汗を掻いた大男は低く唸り、少年を睨む。少年は冷静な視線を向ける。 「…逃がしてもらえると思わないでね。僕はうに姉さんと違って甘くなんかないから」 冷淡に述べ、銃口を向ける。 「貴様ァー! テチャック様を殺したお陰で俺たちは…」 「知ったこっちゃないね」 少年の呆れ顔。銃の引き金を引き、爆音と共に大男を木っ端微塵に吹き飛ばした。 勝利の余韻に浸る事もなく、落ち着いた表情で空を見上げた。
橙の身が木の幹のように聳える大きなニンジン。 その根元には湖のような水溜りが広がっている。言うなればニンジンのオアシス。 周りには小さなニンジンが並び、花を咲かしているものもある。 少年はそこら辺のニンジンの根元に腰を下ろし、息をついた。 「やっぱ、VIOの仕業だよなー。あちこちにフラフラしながら、変わったニンジンばら撒いているっぽいし」 創世卵の聖域。雲の大地が幾重に重なる、ガス惑星のような構造。 その雲の大地に一定の間隔を置いてニンジンのオアシスが出来ているのだ。旅人が迷ったとしても息を吹き返すだけのものが揃っていた。 少年はニンジンを一齧り。とろけるように甘味が広がり、それは舌を伝って味覚を魅了させていた。 見た目はそのままだが、普通のニンジンとは全く違う。 それでなくても妖しげな香りが食欲を誘っている。何も知らない旅人でも齧っちゃうほどに。 「全く、うに姉さんの義妹って面白いなぁ。続々とニンジンクリエーターしてくれるよ」 陽は落ち、空が薄暗くなってくる。 少年はオアシスの所で野宿をすべき、下準備を済ませていた。テントを張り、本を読むなど暇を潰す。いつの間にか、灯りは消え、少年は眠りに沈む。 微かな紫の闇が覆い、満月が上方の大地を透けて映っている。 確実に時は刻み、夜は過ぎようとして行く。 「…そろそろだね」 少年はテントから抜け出す。首飾りのように銀色に反射光を放つアクセサリーが飾られていた。 朝日が覗く前の空の明るみ。 少年は静かに見据えていると、アクセサリーが輝きを放ち、大地を照らした光の中から薄っすらと扉の形をした影が地面に映る。 それはゆっくりと起き上がり、ちゃんとした扉のように立った。 以前にグラムナートで落ち込んだうに魔女を励ますべき、ラナフレームとクロノフレームを合わせたアイテムを使った事があった。それと同じアイテムで別次元の世界へ行ける事をしばらく前から知った。それも偶然の賜物だったが。 ゆっくりと足を踏み出し、目の前の影の扉を手で押し開く。
意識はそこで途絶え、気がつけば絵画が到る所に飾られている一室にいた。円柱の塔の中の特徴か、部屋に曲線が掛かっている。 天井から床まで開いた窓を見据えれば、遥か下の霧が掛かった山岳地帯。 その上にいくつかの塔がバラバラの高さで建っていた。 窓へ歩み寄り、遠景を覗き込めば、止まったような暁の空が一望。一際目立つ大きな塔。あれがこの世界の中心だと悟った。 「…未だに行けないんだよな。何があるのか気になるけど。んー」 低く唸り、腕を組む。 「マキシマム。また来たか…」 振り返れば長身の銀髪を流した男。少年、マッキーは微かな笑みを向ける。 「父上、今度は自分の塔から自発的に来たね」 「お前が俺の記憶を預かっているから、そんな風になっているだけだ。実際の私は死んでいて今のお前を知らん」 この世界の塔は生き死に関わらず、ロウソクの様に人々の人生を象徴する。 生きている人の塔の頂上には人はいない。代わりに灯りがついている。 逆に死んでいる人の塔の頂上には、死んだ直後の万全な状態の本人が住んでいる。 従って、ここに来る事が出来れば誰でも死んだ人に会える事もできる。しかし新たな記憶を刻む事が出来ない為、訪れた人を媒介に新たな記憶を刻む事で生きているかのように"覚えて成長"する。 「…やはり、かの彼女の塔へ入るのか?」 「うん、僕は憧れた人を超えたいから」 不敵に笑む明るい表情。父親としてムルは不敵に笑んだ。 (お前がそう言うようになって本当に嬉しい。が、しかし…) 塔と塔には光の橋が繋いでいる。マッキーの目には自分が関わった彼女との繋がりから橋が移っている。 つまりレガルザインで初めて出会った時の頃から、先の記憶が彼女と共有している為であった。 マッキーの父親であるムルは生まれてから橋が繋がっていた。だからマッキーの記憶を媒介に訪れる事が出来たのだ。
ついに憧れの彼女の塔へ足を踏み入れる。 初めて訪れた時のような緊張感はない。しかし、下への階を繋ぐ階段は見えない。何故なら出会う前の彼女を知らないからだ。 「あーマッキー、また来たぁ!?」 いつものような態度で、簡単なワンピースのうに魔女が訝しげな表情で現れた。 今の彼女もまた、マッキーの記憶を媒介にして当時の記憶に先の記憶を上書きしている。だから彼がよく来る事を覚えていた。 「悪いけど、先のうに魔女に会いたいからパスな」 そのまま上の階へ目指すように、彼女を通り過ぎる。 「えーそりゃ、まだ未熟だから分かる気どぉ」 まだ未熟だった頃の彼女は、到達者レベルに達した現在の彼女の事を知らない。もちろんVIOはおろかハウロやアリエルすら知らない。 今いる彼女は未熟な頃をそのまま具現化されているだけだ。 (スルーするようで可哀想だと思うけど、もう勝っちゃった後だからなぁ。僕が目指すのは…、ムルの結晶と互角に戦えた彼女!) 階段を上るにつれ、緊張が増す。 「…今度も勝てるとは思えんがな」 「うるさいなぁ。知ってるよ。…でも、うに姉さんは強敵と何度も戦って身体で覚えていったんだ」 心が折れていないことにムルは微かに笑む。 (何度も闘える内はいい。最悪なのは限界を決め付けて諦める事だ。そうなった場合、先に成長はない) 何階か昇っていったかマッキーは覚えていた。何度も通っている内にどのうに魔女がいるのかを知っているからだ。 ようやく目標の階層に着いた時、マッキーは扉を開く。 広い部屋。周りの壁画はムルの結晶と戦った記憶が映し出されている。そして、中心にはうに魔女が腕を組んで堂々と立っていた。 「…マッキー。何度来たって無駄でしょ」 威圧を放ち、見据える。 今のマッキーにとっては身震いするほどの凄まじいものに感じる。だけど、笑んだ。 「悪い。守られるだけにいたくないんだ」 図鑑から銃を取り出す。手で払うと図鑑は煙幕に包まれ、虚空へ消える。 「いざ、尋常に勝負!」 「そんだったら何も言わない。私はあなたを守る為に牙を折ってあげるわ!」 腰を落とし身構え、何体かマナが浮かぶ。 「いっけー、うにメテオフラム!!」 うに魔女は無数のうにを投げつけ、マッキーは銃口を向ける。 「錬金銃・フロスティク・ブレス!!」 吹雪を吹きつけ、水蒸気爆発させて迎撃。彼女が接戦を仕掛ける事を見越し、更に狙い済ましながら引き金を引く。 「トルネードナーゲル・ブリッド!!」 うにメイスで間合いを詰めていたうに魔女に、竜巻の奔流が襲い掛かる。凄まじい旋風が床を抉り、岩飛礫を飛ばしながら彼女を呑み込む。 「いがぐりんこ!!」 うに魔女を守るようにいがぐりの形をしたバリアが膨れ、竜巻を撥ね退け、その衝撃で塔の部屋中が震え上がった。 直立不動で胸を張る、全くの無傷の彼女の姿。 マッキーは後ろに飛び退いていた。息を切らしている。うに魔女の威圧が凍て付く吹雪のように肌に突き刺すようだ。 現状のうに魔女と比べればずっと弱い。しかし敵対するとなれば、まるで違う。威圧が自分に向けられているのだ。 (到達者の威圧だったら、きっと僕は肝を潰されて死んでたなー) 「フラム・ブリッド」 再び銃を向け、引き金を引く。いつもの通りの弾丸が飛ぶ。 「打ち消してあげる! うにあああっ!!」 しかしマッキーは笑む。 「ワイド!!」 寸前で弾丸は三個に分裂。うに魔女は驚きに見開く。 しかし、難なくうにメイスの一振りで爆風ごと掻き消す。火炎の余韻が虚空へ溶け消えた。 「……あれ?」 苦笑いを浮かべ、マッキーは唖然とする。 うにメイスをクルクルと弄び、肩に置く。うに魔女は溜息をつき、呆れ顔を見せる。 「そろそろ、のめしていい?」 「あ、ちょっと待ってね♪」 マッキーは満面の笑顔で制止の掌を見せた。その後、ガツンと衝撃音が響いた。
「ムルの結晶は当時、最強の強さを誇っていたからな。ほとんど互角に戦える彼女に勝つには五年早い」 ボロボロにやられたマッキーを背負い、階段を下りているムルが語りかける。 「にしても遠いとは思わなかったよ……」 沈んだような声。ムルはふうと息をつく。 「お前はまだ子供。お前が話したヤッケと歳の差は五、六つぐらい離れている。どう足掻いても最終決戦の戦力にはならん。 それはヤッケ達にも言える事だがな。あのレベルの領域に置いてはお前もヤッケも違わないさ」 「手厳しいね」 「事実を言ったまでだ。彼女を困らせたくないなら、焦らず今の精進を続けろ。諦めなければ、いずれ私を超える。 …少し、反則だがお前の未来を見せてやる」 父の慰めなのだろうか、思わずマッキーは見開いた。
ムルの塔。きちんと並べられた錬金器具と壁画があった。その中で鏡が輝いている。 「あくまで…一つの可能性だ。覗いてみろ」 そう言われ、マッキーは鏡を覗き込む。 立派な背中が映っている。ムルと変わらないほどの長身。両手には洗練された装飾の銃。 彼が見据えるのは眼前の群がる数え切れないほどの敵。 まるでイナゴの群衆のように空の景色が霞んでいる。 銀髪の青年は両手の銃を真上へ向け、引き金を放つ。光球が銃口から離れた先で膨らんでいく。 光球から飛び出すように、数え切れないほどの流星が曲線を描きながら大軍へと殺到。一つだけでも国を滅ぼすほどの爆発球が連鎖して轟いた。 大規模の衝撃波が地上を這い、膨れ上がった爆発球が重なり合って轟音を撒き散らす。 大軍は、空を覆う白光の彼方に吸い込まれていった。 その凄まじさはハウロやアリエルなどとも引けを取らないほどのものだった。 「す、すげぇ…」 マッキーはそんな光景に息を飲んだ。 「何十年かかるか知らないが、お前にはその素質がある。他の奴も見ていたが、到達者になれる人はそういない」 容赦なく言う。父親のムルはいつでもそうだった。 だからこそマッキーにとって厳しくもあれど、頼もしい言葉にも感じられた。 「うに魔女たちが作り出した未来があるからこそ、未来のお前が存在しているのだ。 …だから、その未来の道への希望を"今は"うに魔女たちに預けるんだ」 目を輝かせたマッキーはいつまでも鏡に魅入る。そんな彼の肩にムルは優しく手を置いた。 「その先に新たに出来た未来の道を、今度はお前が背負うんだ」 何か吹っ切れたような少年の瞳。まるで先の未来を見据えるように澄んでいた。 「うん!」
あとがき
焦っているマッキーの話でしたw 何とかうに魔女の力になろうと必死にレベル上げに勤しんでいた。しかし短期間で戦力になるほど上がれない事に焦燥を帯びていた。 そして前から知っていたのか、謎の世界へ何度か行ってレベル上げの場にしていたようですw 父親だから心配していたのだろうか、前々から世話を続けていたようですw
でも実際のイリス1でのムルは単なる悪役だけどネw これは私の思い描いたムルのイメージ?(笑
ここでVIOの存在意義が無意味にならなかったと言うシーンがw
うにうにw
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| 295話 「改造!? チートコード」 | 2009,6,7 |
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295話 「改造!? チートコード」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
ラステルの露出された背中。複雑に入り組んだ文字の羅列が円を描くように並んでいた。 中心には小さな円が描かれていて、不可解な一文字が印されている。 「…レーヴァティル言語で記されたヒュムノスコードとは似ているようで、全く違うわね」 ジャクリは興味深そうに笑みながら振り向く。 「え、全く違うんですかー?」 ルカは首を傾げる。クローシェは腕を組みながら様子を眺めていた。 「ええ、全く違うわ。これ、かなり古い言語みたい。これを知っている人間なんて普通いないでしょ」 「…じゃ、誰が一体?」 ジャクリはまた不可解な笑みを見せる。 「普通、とは言ったでしょ? 普通じゃない人がこれを組み上げて、擬似レーヴァティルに仕立てたのよ」 「そんなの出来る筈はありません!」 やはり声を上げたのはシュレリア。彼女はソル・シエールの塔の管理者である。 創世界のように大地が死海に覆われ、僅かな浮遊大陸だけが人々の住む所だと言う世界球。その世界の中で中心となる塔がレーヴァティルなどに恩恵をもたらしていた。 その塔が機能しなければレーヴァティルは詩魔法を紡ぐ事が出来ない。 レーヴァティルや歴史に詳しいシュレリアが抗議を上げるのは当たり前の事だった。 「こんなの出来ていたら、誰だってレーヴァティルになれるでしょう! そんなの反則じゃないの!」 真っ青な彼女の様子に誰もが事態の重さを知った。 確かにこのコードを誰かにも施せば、本家より劣るとは言え詩魔法を紡ぐ事が可能なのだ。 「え? その…アリエルさんがやってたけど?」 どぎまぎとラステルは半顔を向ける。 「現在で言うアリスね」 ジャクリは笑む。既に事情は知っているように思えた。 「どなたか存じませんが、こんな事をやられても困ります! アリスはどこ?」 「関所の…、ここの城みたいな所にいるんじゃない?」 オリカが告げた。 「一言言ってきます!!」 毅然とした振る舞いで一室を去る。ドアが乱暴に閉められ、しばしの沈黙。 ジャクリは一息つく。 「全く頑固なのは相変わらずね…。まぁ迷子になるだけだから時間かかるわね。 ともかく、このコードは極めて高レベルの構築図だわ。一寸でもずれていたら全て台無しになるほどだから、一寸違わず描ききらないといけない。 よっほど強い精神力の持ち主じゃなきゃ出来ない芸当ね」 面白そうに含み笑いしながら、ラステルの背筋を指でなぞる。 「ひゃう!」 思わずラステルは仰け反った。 「…大方、アリエルにそそのかされてコードを刻んだんでしょうね。例えば「これを刻めばうに魔女と一緒に戦えるようになれるけど、覚悟ある?」とかね」 「え? あの方に聞いたんですかっ??」 ラステルは驚いて振り向いた。 「フフ…決まりね」 妖しげにジャクリは確信の笑みを浮かべた。
「え? アリスの所…?」 目を丸くしたリリーは目の前の少女に向き合う。少女は白いレオタードを着ていて、雪のような銀髪。まるで白兎を人間にしたような神秘的な人間に見えた。 「そうです! あの人…。誰でもレーヴァティルになれるコード使っているんですって」 シュレリアの剣幕にリリーは瞬きするしかなかった。 「んー。良く分からないけど、貴方はアリスに会いたいのね?」 「ええ、連れてってくださいませんか?」 「まぁ、ちょうど私も訪れようと思ってたトコなの」 困惑気味ながらも微笑む。彼女は果物と花束を抱えている。まるでお見舞いに行くような素振りだった。 シュレリアはその事を少し気になっていたが、詮索はしなかった。 かくて、彼女は迷うことなくアリスの元へと辿り着けるのだった。
関所の城。最高責任者が住まう宮廷。 その薄暗い何処かの地下部屋。とても広く、天井も高い。幾重の文字が淡い光を放っている。 床には複雑に入り組んだ文字の羅列と線が走っていた。 魔法陣のように円を描き、その中を六芒星を模る線が入り組んでいる。 その中心には一人の女性が裸の状態で仰向けに寝ていた。 「…イングミーナ。助かるのかしら」 側にいたアイゼルは腕を組みながら眺めている。 妙な形のサングラスをかけたアリスは物言わず、何かを呟いていた。 イングミーナを囲むように、何人かのうにっ子が瞑想に入っている。 床の文字がいくつか虚空に浮く。その文字は流れるように螺旋を描き、イングミーナへと吸い込まれていく。 時々、アリスは床に文字を描き、その繰り返しを行っていた。 「これは…!?」 リリーの後をついていたシュレリアは辺り一面の文字を見渡して驚いていた。 アリスは招かざる客が来た事に気付き、背後に控えていたうにっ子と交代をする。そのうにっ子がアリスと同じ手順を行い始めた。 「全く、面倒ね。何の用かしら?」 アリスは一息ついて、リリーの後ろにいるシュレリアに視線を注ぐ。 一瞬、何かの気負いで怯む所だったが、すぐに気丈な振る舞いに戻る。 「…あなた、勝手に改造コードとやらで気軽にレーヴァティルを量産しているようですね?」 「気軽って…。良く軽く口に出せるわねぇー」 あしらうようなアリスの様子にシュレリアはカチンと来る。 「その女性の方にも施そうとしているんじゃないですか?」 「…勘違いしているみたいだけど言っておくわ。ただの治療よ」 「嘘おっしゃい! どこの世界にそんな複雑な治療方法がありますか? 誤魔化したってダメです!」 「話にならないわ」 感情的になっているシュレリアを一蹴。アリスは踵を返す。 「ちょっと! そんなふざけて…」 「静かにして!」 シュレリアの声を打ち消すように、リリーの甲高い声が響いた。 アリスは深い溜息。 リリーは怒りを滲んだ表情をシュレリアに向けた。 「…誰かは知らないけど、出て行ってくれない?」 「でも、納得が…」 「ウチの子を殺したいの!?」 リリーがすかさずシュレリアの抗議を打ち消す。思わぬ反撃にシュレリアも目を丸くする。 アリスは魔法陣の中心にいる女性へ歩み寄る。 「まぁ、納得いかなさそうだから教えておくわぁ。本当に治療なのよ。 元々あった二人の身体が融合してしまって、その不都合が体に悪影響を及ぼしているの。こんな風に施さなかったら、とっくに墓の下ねぇ」 思わずシュレリアは息を飲む。 リリーは静かに果物を入れた籠と花束をイングミーナの側に添えた。文字の明かりが彼女を儚げに照らす。 シュレリアは後をついていくようにアリスの背中に近づく。 「…治る見込みあるんですか?」 「さぁね。私も分からないわぁ。気の流れを汲んでいる精神脈を見透かすソネの太極眼がないから、余計に手間取っているけどね。 こうやって生命の維持を続けるだけで精一杯かもね。 少しずつ融合体に適合させるようにコードを記しているんだけどぉ…」 シュレリアはリリーとイングミーナを交互に眺めている。 アリスは儚げな表情で振り向いた。 「コード気になっているようだから教えてあげるけど、軽々しいって言わないでちょうだぁい」 「……分かりました」 シュレリアは承諾した。どこか重みが感じられたからだ。 軽率に改造コードを使っているのではないと言う事を雰囲気で察した。 「あなたの言う通り、簡単に言えば改造コードね。でも、これはバグを無効化して不都合をなくす為にも使えるのよ。 あそこの女性は元々二人だったの。強敵に出会って融合しなければならない状況になった訳。 最初は融合体ゆえの強靭な能力を発揮していたけど、副作用が体を蝕んでいったの。 元々、違う身体同士が無理に融合したから、互いに反発しあう現象が起きる…。当然の副作用ね。 だからコードを記すことで、その融合体が元々生まれ持ったかのように身体の構造を作り変えて、不都合をなくすつもりだったのよぉ」 シュレリアは儚げな表情で俯く。勘違いしていた自分を恥じると同時に、大変な事情を抱え込んでいる事に心を痛めた。 「もう一つ、レーヴァティルは想いを具現化できる能力があるからね。厳選して二人だけに施したの。 厳しい試練を与えてみて分かったけど、結構芯の強い所があったからなんだけどねぇ。 まぁ、塔の管理者と深い知り合いだったから、これも重要な理由になるわ」 「塔の…管理者…」 「貴方達のいる世界の三つの塔とは違う、別の塔。この塔と繋がっているレーヴァティルは大昔に滅んでしまっているから、管理者一人だけになる」 アリスの脳裏には暁の風景に立ち聳える塔。その頂上に一人の女性が振り返るシーンが浮かんだ。 「孤高に管理している、暁の妖精王…ユーディー」 意味深な意味を含んだ一言に、思わずシュレリアは息を飲んだ。 たった一人で管理するその想いは計り知れない。誰とも繋がらない塔をどんな想いで管理しているのか与り知れない。 それを繋いだのがアリスの擬似レーヴァティルのコード。 状況を良く飲み込めたのを察し、アリスは満足げに笑む。 「ま、余談だけど…このコードを記すのって神経を尖らして一寸違わずってのが辛いわぁ。出来る事ならしたくないことだけれど」 アリスはシュレリアを離れ、微笑む。
「フフフ…、レーヴァティルじゃないのに少し教えただけで一から十を知る。アリス、本当に魅力的だわ」 振り向けば、ジャクリが妖しげに笑んでいた。 「…揃いも揃って面倒な客ねぇ。少し自重して頂けるかしら? ジャクリ」 「そう言わないで欲しいものね。私もあなたやこの世界に興味あるもの…」 二人は陰湿そうな雰囲気を醸し出す笑みを向け合う。
場所を移して、客を招いておもてなしする広場。豪華な装飾が施された部屋。赤い絨毯に長テーブルとそれに並ぶ椅子。 「その塔は少々厄介な所に設置されているんでしょ」 ジャクリの一言。アリスは静かに頷く。 「ちょっと! それはどういう意味か説明をしてくださいな」 クローシェが立ち上がる。 クロアたちは目を丸くして彼女に視線を注ぐ。 「…簡単に見つかるものなら、とっくに私達は辿り着いていたわぁ」 笑みながらアリスはそう告げた。 「恐らく、普通に行ける所にないわ。何か特殊な場所にいる以上、そこへ渡る方法を見つけないと無理ね」 「…月が満ちる夜の明け」 ジャクリの言葉に付け足すようにアリスの一言。 それがどういう意味なのか、誰も分からなかった。曖昧で雲を掴むような感覚。 それ以降、話を繰り返したが平行線のままで進展はなかった。 ジャクリがアリスの研究に手を貸すことになり、それが幸いか、イングミーナの意識回復に兆しが見られるようになった。 普通の生活に支障もなく動けるようになるまで、さほど時間はかからないのだった。
「きゃうん!」 ラステルに背筋をなぞられ、レプレは尻尾と一緒に身を竦ませた。 「へー、これと同じなのがあたしの背中にもあるんだぁ」 「や、止めてけろ。なんか視線を感じてて恥ずかしくなるだ」 レプレの背中にもコードが記されている。 それをまじまじと眺めるラステルに、レプレは赤面しながら身を捩じらせる。
あとがき
ちょっと難しい話が含まれているので、退屈って言うか読み辛いかもネw というワケで擬似レーヴァティルの理由やイングミーナの現状を描写する話だと思って下さいネw(*^^*)
なんかアルトネリコのキャラがこの物語の核心に組み込まれていくようなw
うにうにw
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| 294話 「新しい繋がり」 | 2009,6,6 |
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294話 「新しい繋がり」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
衝撃波の波が吹き荒れ、大地の破片を散らす。巨大なクレーターが煙幕を漂わせて姿を現す。 うに魔女とライナーは共に着地。 「…中々やるな。魔女とは言え、結構強いじゃないか」 息を切らしライナーは剣を身構える。うに魔女は息を切らしながらも笑みを浮かべた。 「そちらこそ! まさか、私の奥義である"賢者のうに"と相打つなんて…」 互いに威圧をぶつけ合い、大地は緊張に支配された。地鳴りと共に、石飛礫が舞う。 うにメイスを振りかぶる。間合いが遠いのに、とライナーは怪訝に眉を顰める。 「うにああっ! 幽の錬金技 ミラージュ・うにメイスっ!!」 「な!?」 うに魔女がメイスを振ると共に、その残像が間合いを縮めてライナーの翳した剣に命中。地面を滑りながらも踏ん張りきる。 (何ッ!? …こいつ、遠距離でメイス攻撃できんのか) 何度もメイスを振るわれ、無数の残像が襲い掛かるがライナーは的確に捌ききる。 接戦では決定打を与えられないと踏んだか、メイスを掻き消す。 「行くわよ! 錬金秘球お披露目――、うにフラム・ワイドー!!」 うに魔女は足と腕を振りかぶって全力投球。赤いうにが飛ぶ。そして寸前で五個に分裂。 「なろぉっ! インパルス・ラッシュ!!」 剣を振り、幾重もの衝撃波を飛ばし、ことごとく迎撃。 うに魔女は腕を交差し、天高く飛び上がっていた。ライナーは素早く見上げた。 「一気にケリをつけるわ! 大爆裂うにメテオール!!」 大気を震わせ、一気にうにの形をした隕石群を降らせた。怒涛の雪崩れの如く降り注ぐ。 「させない、シルフのダンスっ!!」 オリカは紡いでいた詩魔法を解き放つ。 突風を巻き起こし、大地を抉るほどの竜巻がライナーを守るように囲んだ。 隕石群を砕け散ちらせ、残りの隕石は大地を次々と穿っていく。 しかしライナーはいたって無事。既に地を蹴っていた。 滞空しているうに魔女目掛けて剣を切り上げる。 「ここまでだ! 魔女ッ!」 剣の軌跡は鋭く煌き、腰から肩を目指そうとする。 「ダメ――!!」 ラステルの張り裂けんばかりの悲鳴。解き放たれた詩魔法。 うに魔女を守るように壁が張り巡らされ、ライナーの振るった剣は弾かれる。 その隙を突いて、氷のうに頭のうにっ子がライナーへ飛び掛る。 「うにこーり隊、タックルしまーす!!」「とぉやー!」「うにゃーん!!」 「ポン・マシンガーン!!」 オリカの放った簡易的な詩魔法である光の弾丸を連射。うにっ子は撃墜され、次々と尻餅をついてしまう。 着地したライナーはすぐさま草を払うように剣を一回り回転して振るう。うにっ子は全て霧散。 「デカうにっ子!!」 うに魔女は自分より巨大な体のうにっ子を軽々と投げつけ、ライナーに迫る。 苦しい体勢ながらも、真上へと斬り上げる。うにっ子を掻っ捌き、爆発。 「グラムナートの凍て付く魔女ー!!」 ラステルは両手を向け、詩魔法を解き放つ。 デフォルメのヘルミーナは薄ら笑みを浮かべ、杖を振りかざし、吹雪の奔流を吹きつけた。 「ウンディーネ!!」 同時にオリカが詩魔法を放つ。滝のような水の奔流が噴きつける。 互いの力場が衝突。爆発を撒き散らし、広範囲に衝撃波の波紋が広がる。
冷たい烈風が通り過ぎる。 「…どこの娘か知らんが本場のレーヴァティルじゃないな。一体何を仕込んだんだ?」 ライナーは憮然とした表情で言い放つ。 彼の視線の先に、辛そうに息を切らしながらうに魔女がラステルの前に立っていた。 威力が押し切られたのだろうか、彼女の服は所々ボロボロに破けていた。 「ブルーディー…」 うに魔女はそれでも気丈にライナー達を見据える。 オリカは早くも詩魔法を謳っていた。 「庇ってくれたの? いたそー…」 「こんくらいなんでもないわ」 心配そうなラステルにうに魔女は不敵な笑みを作る。 しかし、現実としてはかなり不利。 (実際に闘ってみて分かったけど、接戦でライナーには敵わない。恐るべき秘術がなかったら終わってた。 それにオリカの詩魔法はかなり完成された威力を誇っている。こちらの奥義と太刀打ちできるほどに…)
ライナーは剣を身構え、地を蹴ろうと身を屈めた。 「ラステル、逃げて!!」 うに魔女は突然叫ぶ。戸惑うラステルは瞬き。 「ここは…私が一人で食い止める!」 「なっ!?」 ラステルのみならず、ライナー達も声を上げた。 「分かっているでしょ、あなたは普通の人間なのよ? 私が倒されたら、確実に人質のネタとして扱われるわ。 オゥサワルは嬉々と人権を踏み躙っていた極悪人なのよ。何をされるかー」 しかしラステルは拳を握る。 「…できないっ!」 悲痛そうに声を張り上げる。 「いつもいつも…ブルーディーばっかり。何度も死ぬ思いして闘ってきたんでしょ? 怖かったでしょ? それなのに…あたしはただ家にくつろぐ事しかできなかったのよ! もう…守られるだけは嫌だよぅー!!」 涙ぐんで吐き出したラステルの想い。呆然とうに魔女とライナーは突っ立っている。 「あたし、もっとブルーディーと一緒に面白い話がしたい。楽しく遊びたい。…例え、分身体のホムンクルスであったとしても!」 思わずうに魔女の驚愕の表情が固まる。 ラステルは涙を流し、肩を震わせている。そして、吹っ切れたようにその涙を拭う。 気丈に唇を噛み締め、ライナー達を見据える。 (うに魔女と同じように闘わないと、一緒に話し合える資格なんてないように思っちゃう。 ただ夢を見てばかりでわがままを言うだけの箱入り娘だけに終わっちゃ、顔向けできないもの。 そして…ユーディーにも会えそうにない気がするから…) 両手で喉を押さえるようなポーズで詩を謳おうとする。 「あたしも…一緒に闘う!」 呆然としていたうに魔女は徐々に表情を綻ばす。ここまで意固地となるなら、何を言っても無駄だと悟る。 「…そういうのなら何も言わない。一緒に悪代官っぽいオゥサワルってヤローをぶっ飛ばしにいこ!!」 「うん、もちろんー!」 臨戦態勢に漲るうに魔女とラステル。 彼女らの純粋に輝く瞳にライナーは疑問に沸いていた。悪い事を企むような姿勢とは思えなかったからだ。
遠く離れた所の茂みがガソゴソ揺れる。 (ようし、いいぞw そのまま潰しあえ!) その戦場を遠くの物陰から眺めていた二人。双眼鏡を手にほくそ笑んでいた。 彼らはファルス司祭とオゥサワル。 二人は醜悪な笑みを浮かべ、後ろへ見やる。布を被せた何か大きな塊。 「弱った所をこいつで殺る! こう言うのも何かの巡り合せ――。運命とは全く怖いものですな」 二人は含み笑いし合う。
うに魔女とラステルは既に玉砕覚悟と、緊張を漲らせ気張る。 「おい、ちょっと待て!!」 突然ライナーが掌を向け、制止を訴えた。 ガクリと勢いを失い、うに魔女は項垂れる。ラステルは目を点にする。 「…なに?」 ウンザリした風に顔を見上げる。 ライナーは剣を突き立て、直立不動。無防備を晒す。オリカは「あっ」と口に手を当てる。 「…さっきから聞いてみれば、まるで俺たちが悪党の手下とかに見られているみたいじゃねーかよ」 訝しげに口を窄めた。 「え? この国を乗っ取る為に雇われたんじゃないの?」 パチクリとうに魔女が問う。 「ふざけんな! そっちこそファルス司祭と企んでいるんじゃなかったのかよ!」 「企んでいるですって!? あなた達は詩魔法を悪用して国を乗っ取って、ファルス司祭を失脚させたんじゃないの?」 「はぁ!? なんでだよ!」 「だって、なんかガンマン風の男が襲ってきたし…」 ライナーは頭痛のように額を抑える。 (あのヤロ! …しかし考えてみればファルス司祭は見た目だけ見れば優しそうなお爺ちゃんだもんな。それに引き換え、ジャックは強面で誤解されやすい所はありそうだ) 「じゃあ、オゥサワルって奴は…本当に極悪人なのか?」 「うん! 私がアリスにならなかったら民は奴隷化されていたわ。危うく政権を奪われかけたもの。アイゼルが言うに左翼とかうんぬん」 ライナーは衝撃を受け、驚いた顔を見せた。 「…それってもしかして、嵌められたんじゃ?」 オリカは恐々と口にする。
「ハーッハッハッハ!! その通り!」 声に振り向けば、二人のおっさんが堂々と胸を張って並んでいた。 何か悪巧みしてそうな笑みを見せた。 「オゥサワル!」「てめぇ、ファルス司祭!!」 二人は揃って含み笑いする。 うに魔女もようやく気がついた。神官風の爺さんの顔からは優しい面影が微塵にも感じられない。 「ここまで弱っていれば、この兵器で貴様らを片付けるのも容易い事。積年の恨みをここで晴らしてやる!!」 後ろのなんかの塊。被せた布を剥ぎ取る。 「な…!?」「これはっ!?」 黒く鈍く輝く大砲を背に、頑丈そうな装甲の四足歩行の機械獣。機体中に光の線が走り、動き出す。 自分の意志を持っているかのように低く唸り、息をするように煙を吹いた。 「ふははは! 驚いたか! これが…ラウドネスが作り出したー」
「やっぱりな」 今度はあらぬ方向から声が聞こえ、悪党の二人は硬直。 うに魔女たちは怪訝に視線を移す。黒髪のおかっぱ風の騎士。更に強そうな鎧の大男。色気のある褐色の娘。ツインテールの小さな女の子。 「こんな事だろうと思ってたわ」 溜息交じりにクローシェが見下ろすような姿勢で前に出る。 「うん。ココナちゃんが聞いてたんだ。その神官の老人」 ルカが微笑みながらひょいと身を乗り出す。 「ついでにライナーを見かけたから話しかけようとついていったら、怪しげなオッサンが何か吹き込んでたしねー」 褐色の娘、アマリエはそう言ってウィンク。 「…今回の首謀者はコイツだろう?」 厳つい大男。レグリスが縛り上げた爺さんを地面に転がす。オゥサワルとファルス司祭は目を丸くする。 「ラ、ラウドネスっ!?」 目にタンコブを作り、あちこちに傷跡がある。ノされて気絶しているようだ。 「なんでも、失脚して全てを失ったオゥサワルとファルス司祭がコイツと出会い、復讐を目論んでいたそうだ。 全く、コイツらは悔い改めて人生をやり直す気はないんだな」 おかっぱ風の騎士のクロアは腕を組みながら溜息をつく。 いつの間にかライナー達にはミシャたちが合流していた。 全てが割れた今、うに魔女とライナーは敵対する理由はもうない。互いに頷きあい、笑みを見せる。
一斉に一同の視線が二人と兵器に注がれた。兵器とオゥサワルとファルス司祭は大勢に囲まれ、身を震わせる。 「んで、復讐とやらを続けましょーか?」 コントラストに映えた不敵な笑みの表情の面々。各々が戦意を漲らせつつ、ゆっくりと得物を振りかざす。 「あ、いや…。なんか急用を思い出したもので」 二人と兵器は揃って後頭部を掻き、苦笑いしながら一言。しかし既に遅し。敢え無くフルボッコ。 「うぎゃあ〜〜〜〜〜〜!!!」 天に届くほどの断末魔が轟いたのだった。
兵器は完膚なきにまでぶちのめされ、這い蹲る。そして兵器は没収。三人は関所に突き出された。 無事、事件は収拾できたのだった…。 「済まなかったな。でもこれでいい人だって分かったんだし、改めてヨロシクな」 「ええ、私も勘違いしてた。うん、仲良くやろうね」 明るい笑みに包まれた一同に囲まれ、うに魔女とライナーは笑顔を向け合いながら握手を交わす。 互いに違う世界の人だけど、悪を許さぬ心と負けないと言う熱き想いは同じだ。闘って理解しあえた。 それを乗り越えた握手は新しい絆の繋がりを意味していた。 ラステルはそんな二人を眺め、満面に微笑んだ。
その後、酒場で楽しく打ち解けて宴会を楽しみましたとさ――。
「…俺らの事、完全に忘れてるだろ」 宿の一室。深い溜息をつくジャック。側のベッドに目を回しながらテオは寝かされていた。
あとがき
これでうに魔女たちもアルトネリコキャラの事を知った事になるっスねw さて、今度はどんな話を書こうかーw(*^_^*)
ちなみに一話分、丸々ボツった奴は悪党の復讐までに至る経緯がありました。 その部分を抜き出して、ここに書き込みますw
彼らが出会ったのは半年前の事であった。 オゥサワルはアリスの身代わりの術に嵌められて、偽の大地で篭るしかなかった。痩せ細り、死に絶えるしか道はなかった。 しかし、その大地へ向かっている小型の飛空挺が彼の死の運命を変えた。 荒野にも等しい大地に降り立ち、飛空挺の出入り口が開く。 中から老人の神官がよろめきながら出てきた。 「そ、そなたは…?」 飛空挺の音を聞いて駆けつけていたオゥサワルは、この時がファルス司祭と出会いだった。
「…そうですか。お主もそのような目にあっていたとは」 人気のない建物の中。薄暗い部屋の最中、二人は疲れ果てたような顔で語り合っていた。 互いに権力者である事。自分が最高の権威を握る為に画策していたが、正義を語る若者に潰されて挙句の果てに追放された。 同じ境遇の人として、彼らは共感しあった。 「…このままでは死んでも死に切れません」 「ああ、奴らに復讐するまではな」 同じ怨恨を宿し、それが友情の絆となって二人を繋げた。 彼らは熱い握手を交わし、頷いた。
小型の飛空挺で二人は偽の浮遊大地を離れ、創世卵の聖域に辿り着いた。 関所が障壁を張っていたが、ファルス司祭が前に出る事で通過できた。 検閲に当たった十戒の数人かが目ざとく検索していたが、何にもなかった二人を咎める必要性がなかった。それが救いだ。 ただ、ここからが地獄だった。 途方もなく広い雲の大地を二人だけで旅をするのは無謀にも等しい。 週を待つこともなく、二人は力尽きた。 そんな二人に人影が迫る。 「ふぇーふぇっふぇっふぇっふぇ、こりゃ面白そうなの来ましたな」
科学者の老人ラウドネスっていう人が恵んでくれたお陰で命を救われた。 創世卵の聖域について研究を行っていた為、そうと分かる地図を渡された。幾重の階層に分かれているガス惑星のような所。 アリス達がテチャックと対立している事もラウドネスから知った。 ついでに言えばライナー達もそれに参加しようとしていた事も耳に入る。これで復讐できる対象が揃った。 アリス達はライナー達をよく知らない。そして逆も然り、それを踏まえた上で作戦を三人で練り上げた。 双方の英雄をぶつけ、弱体化した所を兵器で仕留めると言うことになった。
うにうにw
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| 293話 「うに魔女vsライナー!?」 | 2009,6,5 |
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293話 「うに魔女vsライナー!?」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
うに魔女とその後ろに控えるラステル。焦燥を帯び、目の前の敵を睨む。 「行って! フラムのうにっ子、うにびー族!!」 うにうに鳴きながら、赤いうに頭の小人が群がって相手に飛び掛る。 「うおおおおっ!」 ライナーは剣を振るい、剣の軌跡を描く。群がるうにっ子を蹴散らし、爆発の連鎖が轟く。 「アンタみたいな…、邪悪な魔女はここで退治してあげるわ!」 身を躍らせ、オリカは唱えていた詩を解き放つ。 「ドラゴンフェルノ!!」 掲げた掌から光球が膨らみ、火炎を連想させる赤き龍が咆哮を上げながら現れた。息を吸い、巨大な火炎球を放つ。 熱気を吹き付け、呑み込まんとばかりに灼熱の炎が迫る。 しかし、うに魔女は掌に真紅に輝くうにを抱えていた。 「賢者のうに――!!」 押し付けるように翳す。火炎の壁と激突。互いの力場が混ざり合い、膨らんだ。 関所より少し離れた所で、大地から大噴火のようなものが噴き上げる。
★ …なんでこういう経緯に到ったのか、前に遡る事にしよう。
噴水の広場。ベンチにクロアとココナが一緒にアイスを平らげている所だった。 その近くで、うに魔女とラステルは楽しそうに談笑を繰り返していた。 ここは公共の場。旅人などもくつろぎに良く訪れる所でもあった。 「あの、済みませんが…お頼みを聞いていただけないでしょうか?」 「なに?」 振り向くと気の良さそうな神官の衣を纏う白髪のお爺さんがいた。 どことなく未来服っぽいイメージの神官。絶えない微笑みで好感を持て易そうなのが第一印象。 「私はファルス司祭。大地の復活の兆しを見せたメタファリカの世界球からやってきたエル・エレミアの元司祭です」 「わーなんか凄い人っぽいよー」 ラステルは異世界の人間を物珍しそうに眺め、戸惑ううに魔女は相槌を打った。 「…でも、何で私に?」 「噂によれば、君は英雄じゃありませんか? 独裁者テチャックを倒すのに一役買ったと話に聞いていますよ。 その実力を見込んで頼みたい事があります」 「うーん、できる範囲でなら…」 腕組みし、うに魔女は上目で頷く。 どことなくにこやかな目が怪しく輝いた。しかし二人は気付いていない。 「…ここで騒ぎを起こした張本人のライナー達を捕まえて欲しい。彼らは詩魔法で国家転覆を謀り、私をも失脚させられたのです」 この前、巨大なクレーターが出来ていたり、その近くにセロットが倒れていたりとかあったのを思い出す。 噂で詩魔法を使える人が喧嘩をやらかしたとか。
「あーっ! ファルス司祭、てめぇノコノコ出てきやがったのかよ!」 いきなりの怒声。驚いて振り返るとガンマン風のいかにも怖そうな青年がズカズカ歩み寄ってきていた。 「ひぇぇ、彼はジャック。ライナー達の仲間ですよ。とても乱暴で…」 ファルス司祭は脅え、うに魔女達の背後に回りこむ。 「ちょっと、止めなさいよ! このごろつき!」 うに魔女は制止の腕を伸ばす。ジャックは憮然とした表情を浮かべる。 「ああ!? 何で庇うんだよ! そいつは極悪人だろが!」 「あんたの方が悪人面してるじゃない! 爺ちゃんを苛める奴はこのうに魔女が許さないわ!」 「てめ…」 頭にきて、突っ掛かろうとした。 しかし思わぬ反撃。ガツンとうにメイスの強烈な一撃を受け、ジャックは敢え無く撃沈。 ふて寝するように倒れ、頭から硝煙が昇る。 「安心して。こういう輩を追い出してあげるわ」 承諾し、うに魔女は胸を張る。ラステルもはしゃぎ、拍手をする。 「さすがブルーディーだぁw」 「おお、これは頼もしい! では頼みます」 ファルス司祭は微笑み、何度も頭を下げた。
★ 静かな広い路地。何人かの旅人が取り囲んでいる。 「おっ、なんだろうな?」 ライナーとオリカは群衆が気になり、近づく。 「あはははー!! 我が世界征服の野望に近づけた記念として、このお土産いかがぁー!?」 妖しげな黒いドレスを纏う女性。なんか哄笑を浮かべながら、奇妙なグッズを販売しているように見えた。 「ねぇねぇ、レグリスー、これ買ってぇ!」 「お、おい。アマリエ…、マジでこれが欲しいのか?」 親子か? 鈍重な蒼紫調の鎧を纏う大男に、褐色の踊り子のような色気満載の娘がねだっている。 子煩悩の父親のように渋々買い物に応じたようだ。 その側で幻獣界の女の子である桃華が並んでいた。彼女もお土産目当てのようだ。 「あの人、ここを支配しているアリスっていう本家本元の魔女らしいよ」 オリカはライナーに耳打ち。 「…なんか黒幕って感じに、悪女っぽいな」 片目を瞑り、溜息。 彼らから離れ、人気のない所に来ると一種の儚さを感じた。 しみじみとした気分で歩いていると、初老のみすぼらしい人がよろめきながらこちらに近づいてきていた。 「うわ、ホームレスだよー」 オリカは怪訝に眉を顰める。ライナーも無視して通り過ぎようとしていた。 しかしマントを掴まれる。 「おい、恵んでやれるものなんかねーぞ?」 訝しげにライナーは振り向く。 「お、お願いです…。助けてください」 脱力するように初老の人は跪き、何度も土下座する。 戸惑ったライナーはオリカと一旦顔を見合わせる。そして訝しげに見やる。 「…何があったんだ?」 この声に初老の人は顔を見上げた。一目で出目金のような浮き出た目蓋と眼球が特徴のバーコードハゲのおっさんだ。 「わ、ワシは元々は…、民主主義の有権者オゥサワル。うに魔女のアリスを知っていますか?」 広い路地で妖しげなものを売っていた魔女を思い浮かべ、オリカは頷く。 「そいつがどうしたんだ?」 「奴は悪魔なんですよ! ワシを罠に嵌めて国を乗っ取りました…。 お陰で家族も財産も全てを失い、こんな惨めな有様…。こんな風に不幸になった人も他に居るのです。 だから…、この世の平和の為に君達の力を見込んで魔女を殺…倒して欲しい!!」 泣き付くオゥサワルにライナーたちは戸惑う。オリカは息をつき、呆れたような顔を向ける。 「生憎、そんな暇はないの! 誰か他に当た…」 「ライナぁー!」 突然、ミシャの声が飛んできた。 驚いて振り返ると息を切らしながら駆け寄ってきていた。 「大変! ジャックが魔女に…!」
宿の一室。ガンマン風の青年はベッドで上半身を起こしたまま、頭を抱えていた。 「す、すまねぇ…。ファルス司祭をとっちめてやろうと思ったら、魔女に邪魔された」 「なんだと! …魔女とファルス司祭が!」 オリカとライナーは見合わせた。 アリスとファルス司祭がグルになって、悪さしようと目論んでいると危機感を抱いた。 その様子を窓から眺めていたオゥサワルは笑みに目が歪む。
関所責任者のいる城に近い立派な建造物。その門前。 「おい! そこ止まれよ!!」 歩み寄ってくる二人に門番の兵士のテオは掌を向け、制止を呼びかける。 「魔女に用がある。わりーがどいてくれよ!」 「なにっ! うに魔女に何の用だよ!! ダグラスの留守を任されている以上、狼藉はゆるさねーぜ!」 あくまで遮るテオにライナーは憤った表情で剣を引き抜く。 「それはこちらの台詞だ。ファルス司祭と何を企んでいるんだよ!」 「司祭? ハウロ司祭に恨み持ってんのかよ? 何だか知らねーが、俺が通さないぜ!」 テオはいきり立ち、剣を振るう。ライナーはそれを受け流す。 幾度かの斬りあい、その間に溜めてきた詩魔法をオリカは放つ。 「スラッシュソード!」 黒い衣を纏うオバケが剣を振りかざし、テオを切り刻む。 「ぎゃあああああああああ!!!」 鎧の破片を撒き散らし、テオはその場に伏す。
「ちょっ、アンタ! 何してんのよ!」 その場に居合わせたうに魔女が声を上げる。 ライナーとオリカは振り向く。彼女の顔を見るなり、睨みを利かす。 「ちょうどいい。お前がジャックを張り倒し、オゥサワルって奴を突き落とした魔女だろ? 成敗しに来たぜ」 「…アンタッ! あいつの仲間ぁ!? よくもテオの事やってくれたわねー!」 ライナーとオリカ、そしてうに魔女はズカズカと足を踏みしめ、憤った顔を向け合う。 「「ちょっと面を貸しなさい!」」 彼らの剣幕に、側のラステルはおろおろする。
★ 町中でやらかすのもなんなので、関所より離れたところの雲の大地へ移動する事になった。 風が吹き、グレー色の草原が揺らめかす。 気丈に見据えるうに魔女。それに対峙するライナーとオリカ。いつでも闘う気満々だ。 「…ラステル。詩を紡いで!」 「あ、…うん!」 うに魔女に力を貸すべき、ラステルは詩を紡ぎ始めていく。 「させっかよ! オリカ頼む!!」 「うん、任せて!!」 ライナーは地を蹴り、剣を振り下ろす。うに魔女も負けじとうにメイスを練成し、振り上げる。 二つの得物が激しく交錯。 「おおおおおおっ!!」 気迫漲る鍔迫り合い! 互いの威圧が膨らみ、大地を振るわせつつサークル上に抉った。 共に捌き合い、間合いを離す。 「"理の三つ扉を開錠" 恐るべき秘術!! 出でよ、うにっ子!!」 うに魔女は三つの扉を開いた感覚を得、周りに花火の噴火が轟き、次々と赤いうに頭を冠するうにっ子が飛び出す。
…そして、ここに到るというワケであった。
あとがき
本当はクロア達も加わって、熱いバトルって展開を描きたかったんですよw でも、色々な問題でライナーとオリカに限定しました…(-_-) あちこちでクロア達を出してますが、伏線ですネw
アルトネリコのゲームをやっている人なら分かるけど、暗躍したキャラが原因ですネw しかしジャックやテオが不憫w ジャックは結構コワモテですし、初見で迫られたら勘違いするかも。でも本当はいい人っスw(^_^) リリーのアトリエのキャラのテオは血気盛んで勘違いしやすい。 そのお陰で対立してしまう理由になってしまいました。 果たして彼らは和解できるのでしょうか…?
うにうにw
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| 292話 「謎の旅人!?」 | 2009,6,4 |
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292話 「謎の旅人!?」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
紫色の空。しかし第二階層であるせいか、高山の空のように若干濃く見える。 「あそこにするか…。長旅でクローシェ様の愚痴率高くなっているし…」 疲れたような表情で溜息。黒髪のおかっぱ風の青年。近未来的な騎士の鎧を纏う。 その澄んだ黒い双眸が雲の大地を一望。 彼らが向かう先は"第二関所"。 「ここくらでひと休みしませんか?」と門に書かれている関所。零階層の関所とは別のもう一つの関所。 しかし関所と言っても、多くの人が住めるように建造物が何件もあり、一つの大きな町となっていた。 アリス達はそこで最終決戦のために滞在している。
好青年が町を囲む大きな塀の上で胡坐を掻く。町を一望し、笑む。 「へへっ、まるであの世みたいだぜ。創世界はよ」 彼はセロット。別の世界球からやってきたうにの系譜。いい加減な性格の青年。 別に錬金術が使える訳ではなく、スポーツで培った技術とうにの理を組み合わせた技を得意としていた。 テチャック戦でも充分な戦力として活躍した為、最終決戦用のメンバーに入れられていた。 「ふふふ、久々に血が騒ぐぜぇ〜」 下卑た笑みを浮かべ、手をわきわきさせる。 なぜなら、比較的女性が多く滞在しているのを目に付けていたからだ。
「へい! そこの一輪の花。俺様と一緒に人生の道を散歩して行こうぜー」 一輪の花を手に跪き、目の前の無愛想な少女に声をかけた。 少女はしばしセロットを眺めていたが、何も言わず立ち去ろうとする。 「ああっ、せめて名前だけでも!」 俊敏に回り込み、だらしなくアタック。 「……パパル。気が済んだ?」 そう呟くとセロットを通り過ぎていく。セロットは諦めきれず追いかけ、横から誘いの声を繰り出していく。 しかしパパルは無表情のまま歩きを止めない。 「てめぇ…、何しやがる!」 ぶきらっぼうな声に振り向くと、血気盛んそうな黒い少年が着地。こめかみに怒りマークがついている。 「邪魔すんなよー。俺様はこれからパパルちゃんと楽しいラブラブすんの。な?」 パパルは振り向くだけで、何も言わない。 頭に来た少年は拳を震わせ、剣を引き抜くと同時に切っ先をセロットの鼻に突きつける。 「二度と言わん。とっとと失せろ! 殺されたくなかったらな!!」 「ひぇぇ、おっかねぇー」 「…クゥ。ダメ。一緒にいこ」 クゥの上腕を掴み、首を振る。クゥは鼻息を鳴らし、剣を納める。 「ちぇ――、あの二人デキてんのかよ〜〜!」 去っていく二人をバツの悪そうな顔で見送る。
大きな町の割に人気が少ない。セロットは寂しげに感じる。 いるとしても最終決戦メンバーと、たまたま立ち寄った旅人などが少数いるのみ。 「おっ、アソコに裸婦が!」 年頃は十二歳頃か? 未発達の女体。色白な肌に黒い髪の毛。 「こんな所でそんな格好じゃ、風邪を引いちゃうよ? 何なら俺様が自ら…」 「フフフ…なにそれ口説き文句?」 ニヤリと妖しげな笑みを浮かべる。毒々しい魅力を放つ少女にセロットは背筋に何かが走る。 「また母さん、そんな格好で歩いてたら…」 走りかけてくる深紅の鎧をまとう女性のような人が来る。どこか体格がガッシリしている。 (は? 母上…?) 「アヤタネ…。私の息子なら母の気持ちを理解するものよ…」 (む、息子!? 男かよ! ってか親子関係かよ…。歳が逆じゃねぇの?) 言い合う二人を眺め、目を丸くする。 どう見ても年上の青年に、妹のような年下の少女。親子ごっこをしているとしか思えないが、彼らは真剣だ。 「それより口説いてくれた青年を無視してちゃ、可哀想よ」 妖しい笑みを向ける。まるで獲物を見るような艶かしい流し目だ。 「この新しい詩魔法を試し――――」 「それより服! 先に服を着てください!」 遮るようにアヤタネが黒っぽい服を押し付けて阻んだ。 怖気づいていたセロットはその隙に逃げ出す。背中越しから「どう引き裂かれるか見てみたかったのに…」と聞こえた。 (ヤベェのと絡まれるところだった) 建物の物陰でセロットは胸を撫で下ろす。 「あら、坊やじゃない」 気付けば、妖しげな笑みを浮かべる紫の色調の女性が二人こちらに振り向いていた。 片方は釣り目に紫のシンプルな服で、肩の肌が露出されている。薄いヴェールをかぶっている。薄い紫の髪の毛が流れる。 そしてもう一人は垂れ目だが、銀髪に三つ編み。スタイルの良い体の輪郭が浮かぶ未来服のような格好。微笑んできた。 「き、今日はいい天気だね。君らはそこで何を…」 危険な匂いがすると、長年のナンパで培った勘が警報を鳴らしていた。 「ウフフ、何って? スピカちゃんとちょっと交換してただけだから」 「ええ、ヘルミーナこそ…。中々の毒物…いえ薬品を作ってらっしゃるのよね。相棒に欲しいくらいだわ」 妖しげな笑みで笑い合う二人。 その隙に忍び足、抜き足と後退り。しかし鋭い二人は振り向き、揃って鋭い眼光を光らす。 「まぁ、お暇しなくてよろしいのよ? もう少し…」「ちょっと付き合ってても損はないわ」 まるで馬鹿な獲物を逃さんと蜘蛛が歩み寄ってくるようにさえ錯覚した。 「そこまでだ!」 咎めるような声。セロットと二人の間に降り立つ少女。 白い色調の変わった神官服がスレンダーの体をよりよく見せる。腰にまで伸びたツインテール。クールな銀髪。気品溢れる顔立ち。 少女は立ち上がり、毅然とした態度で両手に持つ褐色の鎌のようなトンファーを胸の前でクロスさせる。 「…違法な取引。見過ごせぬ。そして見知らぬ青年に毒牙を」 「おおっ、女神の助け舟! ありがとう。麗しい貴女は誰なんだろう…? 教えていただけないでしょうか?」 胸をときめかせ、元気よく語りかけてくるセロットに少女は驚いたように振り向く。ツリ目を丸くする。 「…フィー。本名は言えぬが、スレイフ王家の者だ」 「百年も待った甲斐があった。俺様は貴女のような世界に二つとない高貴な花を見つけたようです。これから君と共に一夜…生涯を尽くして歩んでいこう!」 セロットは馴れ馴れしくフィーの手を取る。面食らった彼女は、すぐさま表情を険しくする。 「……死ね!」 侮蔑の一言、鎌の柄でガツンと張り倒し、瞬く間に走り去って行く。 「あぅぅー、そんなつれなくて切ない…。だがそれがイイかもw」 情けない呻き声を吐きながら、ほうほうのていで建物の影から抜け出す。しかし少女は既にいない。 「あらあら、情けない男ねぇ。ここは一つ薬でイイキモチに――」 物陰にいる二人の含み笑い。毒牙にかかるまいと脱兎の如く逃げ出した。
噴水の広場。膝に手をついて息を切らしていた。 「はぁはぁ…。だが、俺様は挫けねぇぜ! 数々の花園を啄ばむまではー」 元気を取り戻し、ガッツポーズを決める。 「ゲロッゴを貶すなんて許される事ではありませんっ!!」 甲高い声に振り向くと、旅人だろうか? 団体同士から女性が言い争っていた。 毅然とした剣士風の女性。聖騎士のように気品溢れる風貌。太陽を模したティアラ。金髪に女王気質の気丈な顔立ち。 「ク、クローシェさぁん。落ち着きましょうよ」 止めようとしたのは、側の気弱そうなショートの黒髪の少女。月を模した髪飾り。露出高めなチャイナっぽい服。へそが見えている。 「ルカ! これが落ち着かずにいられますか!」 「あら偉そうね。どうでもいいけど、キショイ蛙のどこが可愛いのか、その美的感覚が疑わしいわね」 金髪っぽい、薄い栗色の髪。二つの長い前髪が特徴で、翼を模した無骨な飾りが見えぬ耳の少し上についている。 未来服のようなワンピースで小鳥のようなイメージを彷彿させる小柄な体格。 喧嘩売っているのは彼女のようだ。 「オリカー、何も、そんな風に言うことないんじゃない?」 溜息をつく黒髪の美しい少女。スタイルも風貌も凛としていて非の打ち所がないかのような雰囲気を醸し出す。 「いいんじゃない? ミシャ。これを機会にズレた感覚を直すにはちょうどいいのよ」 オリカは怖いもの知らずとでも言うようにヤレヤレといった風に両手を翻し、肩を竦めた。 それに対し、女王気質の女性剣士は肩を震わせ、憤る。 両足を広げ、引き抜いたレイピアを素早く向けた。 「黙りなさい! この御子クローシェを侮辱するならまだマシも、愛らしいゲロッゴを貶めるとは!」 「何ムキになってんの? バッカじゃない。たかがカエルグッズでしょー?」 どうやらグッズを貶されて一触即発状態である。セロットは上唇を舐め、歩み寄る。 (こんな可愛らしい女性達を争わせて、花に一生ものの傷をつかせるワケにはいかない! 漢としてセロットはこの喧嘩を沈めてまいりましょう。 そして一緒に俺様ベッドイン・乙女ハートオープン! うへへへへw) 「あ、危な……」 彼女の付き添いの男だろうか、呼び止めようと掌を向ける。しかしセロットは野郎は無視と言わんばかりに耳を貸さず。 首を振りヴェールのかかったロンゲが靡く。 「やぁ、俺様は麗しい王子様と言われるセロット。可憐な花と蝶がこんな風に傷つけあって欲しくないよ。だから双方とも刀を納めて欲しい」 (これで九割がたの女性はキュンとなって、俺様にメロメロさ〜!) 内心、自信満々。白い歯が輝いて見えんばかりににっこり微笑む。 しかし地を揺るがして、巨大な力場が発生している真っ只中。既に二人は臨戦態勢だった。 「こぉのーアルトネリコォォォ――!!」「天誅です! 食らいなさい、アルトネリコッ!!」 二つの巨大な光球がセロットを挟んで炸裂。大爆発が轟き、爆炎を周囲に撒き散らした。 「ギャ――――――――ッ!!!!」
瓦礫が散乱。巨大なクレーターが穿っている。 「とりあえずグラスメルク(錬金術)で治しておいたけど。うに頭の男、よく生きてたな…」 ふうと金髪の剣士風の青年が立ち上がる。足元には黒焦げのセロットが横渡っていた。 「全くだ。女の喧嘩を止めに来たんだろうが、相手が悪かったな。ついでに方法も悪かったように思えたが」 もう一人の男はメガネをかけた黒髪のおかっぱの青年。腕を組んで見下ろしている。 「クロアー。行こうよー」 年端も行かない少女が手を振る。黒髪のツインテールで露出度の高い大胆な服を着ている。 「ああ、ココナ。今行く」 クロアと呼ばれたおかっぱの青年は少女と共に歩き去る。 「ライナー君。疲れたから宿とって休んでいこ」 金髪の剣士風の青年にミシャが駆け寄る。 「ああ…。コイツ放っておいても大丈夫だろうしな」 セロットを見やると、この場を去る。途中でオリカが突っ掛かってきてミシャと談話を繰り返す。その声も遠のいていく。
彼らが去った後、セロットは意識を取り戻し起き上がる。 「さっきのラステルちゃんやレプレちゃんと同じ詩魔法使ってきたのは意外だったな。こいつは癖になるほど効くぜ…」 なぜか恍惚していた。 すると夕暮れがかかった人気のない路地に一人の女性が戸惑ったように見渡していた。 子兎のような白っぽい銀髪に未来服っぽいレオタード。対なす耳元から三つ編みと後頭部から流れる長髪は脛にまで届いていた。 同じ白を強調しているフィーとは違い、おっとりした大人しそうな少女。 思わずセロットは胸をキュンとさせた。 「やぁ、一輪の花として咲く…可愛らしい君は迷子かい?」 少女は気付くと、背の高い顔立ちの良い男が手を差し出していた。しかしそれを払う。 「私は迷子じゃありません! ですからー…、っとと!」 気丈に否定しようとした所、少女は何かに躓く。前に屈む形でセロットのアソコへのめりこむ。 黄金に輝く二つの珠に白兎が猛スピードで突進! 金属が割れるような音を立てて、木っ端微塵に砕け散る珠。 「ぎゃああああ$&%E$O#W#$%」 「す、すみませんっ!」 股を抱えながら悶えるセロットに、少女は赤面しながら何度も頭を下げ、そのまま脱兎の如く走り去る。
「あっ、シュレリア様! こんな所に」 ライナーは走ってきた少女と鉢合わせ。 「迷子になってたみたいだから随分探してたぞ。広い上に人気ないから…、っておいおい」 泣きじゃくりながら胸に飛びつくシュレリアに、ライナーは思わず戸惑った。 「わ、私っ! あのハンサムな人をニューハーフにしちゃったかもしれませんっ!」 「は?」 ライナーは首を傾げ、目を点にする。
あとがき
ゲスト出演って事で登場させてみたw セロットのキャラを印象付けると共に、飽きないように特別企画もw 別に最終決戦に参加してくる新キャラじゃないぞw 妄想で一応考えてたりするけどネw
第三の塔を探す為に遥々来たのよ、とジャクリ。 そんでレーヴァティルじゃないラステルとレプレの詩魔法の謎を解き明かそうとする? 最終決戦のヤバい敵を相手にライナーやクロア、レグリス隊長が奮戦。 本場のレーヴァティルのレプレキア&アルトネリコがラスボスに直撃!!
…なーんてネw
うにうにw
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| 291話 「ラスボス?のツンデレ」 | 2009,6,3 |
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前回の話「290話 アリスのあとしまつ」
291話 「ラスボス?のツンデレ」
うに魔女のアトリエ 〜創世記〜
開闢の鈴の音色がどこからともなく響き渡る。 花弁が風に乗って吹雪のように舞う。晴天の下で花畑が咲き乱れる明るい花園。 「…ありがと。ユアン、助けてくれて」 天使のような笑顔で微笑むうに魔女。真っ白なウェディングドレスは洋蘭の白い花弁を彷彿させる。 そんな彼女を抱きかかえるユアン。 「当然の事じゃないか。僕は…」 一見、細い美青年が紳士服を纏ってはいるが、彼はホワイトサタンと名乗る神人類のトップ。 お互いは違う勢力を纏めるトップ同士。 ときめくその想いを通わせるには立場が太極過ぎる。正に禁断の愛。 それでも、この夢のような世界で幸せになれるのなら…。 途端に花吹雪が絶え、深海のような暗黒世界に空が転じていく。うに魔女は泡となって解け消える。 彼女のいなくなった自分の腕を眺める。どこか扉が開く音がした。 ユアンは見上げ、目の前に現れた人物に見開く。鏡で写したように自分がいる。 「一途だねぇ、だが忘れるなよ? アイツはお前の事を本気で敵だと思ってるだろ」 黒い衣を纏う自分がこちらに囁くように笑んだ。 ユアンは呆然と口を開ける。 「…迷うな! 敵であるうに魔女を殺せ! 神人類を導く神として、崇高な道を歩まなければならん」 耳打ちするように黒き自分が耳元に囁きかけた。 それはまるで、こちらを深海の海淵へと引きずり込もうと誘っているように思えた。
雲の世界を縫うように、雲の大地を避けながら移動するハート型の方舟の群衆。 複数の方舟に囲まれた大きな方舟。 神人類を統括するホワイトサタンは腕を組み、王座で静かに座していた。 (…あの夢はなんだったんだ!? 妙に意味深なものを感じる) 「退屈やなぁ」 呆けながら側に立つホーディアは欠伸する。 「…旧・天使精鋭隊も連絡こないですしねぇ。第二階層を越えたとすれば、奥で何かあったのかもしれないですし」 アクシャカが嘲笑しながら、ホワイトサタンに振り向く。彼は瞑想しているように、目を瞑ったまま微動だにしない。 脳裏には明るく微笑んでいるうに魔女の顔が映っていた。 そしてテチャック戦で分身体であるホムンクルス同士とは言え、彼女に触れた。その感覚が体に染み付いて忘れられなかった。 池田マリモに取り込まれようとしていた彼女を抱きかかえて脱出をしたのだ。 女性の暖かい温もり。その感触を思い出すたびに気持ちが高揚してくる。 「ユアン、大変でヤンス! タージュ・ビスが…」 突然扉が開き、ノッポが飛び出した。 ホワイトサタンは内心動揺し、身を竦ませる。しかし咳払いして落ち着かせた。 それを逃さず、ホーディアはジト目で察した。 「コラ! ホワイトサタン様と言うだよ。アッ、オラぁ、すみません」 太ったチビはノッポのスネを蹴ると、ホワイトサタンに向かってお辞儀する。 すると、途端に凄まじい威圧が覆い、箱舟を揺るがす。 「な、なんや! この威圧…ッ」 「これは…!?」 ホーディア、アクシャカ二人の幹部はうろたえた。 ホワイトサタンは唸り、腰を上げる。
ある方舟の公共の広大な広場。トレーニング施設として、様々な設備が施されている。 中心には四角形の格闘場が幾つか並び、その一つに一人立っている。 周りの神仏像は驚愕の表情で、その人物を眺めていた。 シャッタードアが開き、ホワイトサタンが姿を現す。思わず見開く。 「あ、ホワイトサタン様! 天使精鋭隊の一人が…」 凄まじい威圧を放っていたのは、死海に入りかけて死に掛けた筈のタージュ・ビス本人だった。 滝のように溢れんばかりに、重々しい強力無比なオーラが彼自身から漲っていた。 「はーっはっはっは! このパワー信じられんねぇ!!」 素晴らしい玩具に目を輝かせる子供のように歓喜に満ちる。 (これは…、プロモーション現象!? 死海で瀕死の淵に陥り、充分な休養を経る事でパワーアップをっ…) 呆然とホワイトサタンはそんなタージュ・ビスを眺めるばかりだった。 「お、誰かと思えばホワイトサタン様じゃねぇですか」 気付いたのかタージュ・ビスは照れ臭そうにペコペコと頭を下げた。 「…信じられん。まさか幹部クラスにまで強くなっているとはな」 (下手すれば、それ以上かも知れん) 「いえ、偶然の賜物です。死海に入りかけた時はヤベェと思いましたが、こんな事になるなんて俺自身も驚いていますぜ」 妙に謙遜した態度で照れたような表情。流石にユアンも面食らった。 (彼の性格を考えれば、下手に力をつけると調子に乗って付け上がると思っていた。 それだけの力である。単純な強さだけを見るならアリスよりずっと強い…) 「これなら、こんな俺でもホワイトサタン様の為に役に立てそうな気がするぜッ」 ガッツポーズに手を握り、強い決意を宿した眼差し。目が輝いている。 呆けていたが、ホワイトサタンは表情を綻ばした。 「そんな謙遜な事言わんで、この余に挑戦してみるのも一興とは思わんかな?」 わざとらしく挑発してみる。 今までの彼なら、野心を宿して転覆を目論もうとしていたのかもしれない。 「いえ、滅相もありません! 今なら分かるんですが、まだ…敵いません」 沈んだような表情を浮かべ、首を横に振った。 「つまらんな。まさか、お前が丸くなるとはな」 「そんなこと言わねぇで下さいよ〜」 弱々しく言い放つタージュビスにホワイトサタンは吹き出した。 「はっはっはっは! 悪い悪い、挑発して悪かったな。だが、これで余にとっては喜ばしい限りだ。お前は限りなく余のレベルに近づいてきた。 今日からお前が天使精鋭隊の隊長になれ。依存はないな? セーイギ・ビス隊長」 タージュ・ビスは気付くと、背後に天使精鋭体が揃って馳せ参じていた。 「異存はありません。寧ろ歓迎したい所であります」 跪いたまま頭を上げる。 それを見てタージュ・ビスは慌て始める。 「ち、ちょっと待ってくれ! 悪いけどよ、今まで通りのポジションでお願いできねぇか?」 「いいのか?」 ホワイトサタンは振り向く。 「ああ、俺に隊長なんて柄じゃねぇです。ただ強けりゃ隊長になっても意味はねぇと思う。セーイギ・ビスのように皆を纏められる指揮力はねぇっす。 そういうワケでいつもの通り、このパワーを生かしてこの隊に貢献できるように精進したいとっ」 合掌しながら、頭を何度も下げる。 そんな彼にセーイギ・ビスは感動に打ち震えていた。 (この間までは自分勝手な乱暴者だったのに…、いつの間にこんな立派な事をっ……!) 「タージュ・ビスの癖に嫌味を言う…」 寡黙なペナーリィ・ビスは舌打ちしながらも、快く笑んだ。 「ばっはっはっは! こいつぁ、天晴れものじゃ。生意気にも大きくなりおって」 「いてぇですせ。ヂャッジー・ビスさん」 背中を叩かれ、恥ずかしそうに振り向く。 「カッコいいですね」 「ええ、以前のヘタレとは思えないくらいだわ」 ジーヒ・ビスとアイ・ビスは微笑む。 「そりゃないっすよ! 前の黒歴史、思いださせねぇでくれー」 和気藹々する天使精鋭隊を眺め、ホワイトサタンは快い笑顔を見せた。 徐々に少し寂しげな表情に変わる。 (あいつらにはその感情がある。自然と喜べる"心"が沸いている。だが中庸の余には…) どこか燻った気持ちが奥の中で滞っていた。 その度に何故か敵側であるうに魔女が目に浮かぶ。思わず首を振る。 (奴は倒すべき敵…だ。世界を味方につけている彼女を倒すと言う目的が余にあるではないか!) 目の敵とばかりに拳を握り締める、が程なくして緩んだ。 その気持ちが本気なのか、自分でも戸惑っていたからだ。 「…うに魔女」 ホワイトサタンはそのままトレーニングルームを出る。その廊下でクリコが佇んで沈黙を保っていた。
方舟のある大きな空洞。 都心を思わせる高層ビルが天井と床を繋ぐ光景。薄暗く、ネオンの光彩が美しく魅せる広場。 「皆のもの、宣言の広場に集まっていただいて感謝する。」 ユアンは崖から見下ろすようなベランダで厳粛に発言した。 その下のベランダで天使精鋭隊がユアンに向き直って会釈。 「もう皆も知っておろうが、アリス達はあのテチャックをも打ち倒した」 この一言で神仏像たちにどよめきが上がったが、さほど動揺は少なかった。 「そこである策を講じたいと思う」 「おお、本格的に仕掛けますか!」「しっ、黙って聞け」「何か重要な策であるに違いない」 騒ぐ神仏像に混じって、クリコは静かに佇む。 「…アリスを我が味方に引き入れたい」 ホワイトサタンは悠々と両腕を左右に広げ、高らかに宣言。 途端に場は凍りついた。 幹部として側にいたホーディアもアクシャカも面食らったような顔で彼の背中を見る。 「な、な、なんですとォ――!!」 一斉に神仏像たちは叫ぶ。 敵のボスであるアリスを味方にしようと言い出したのだ。 普通なら見当違いもいい所である。 「アリスはウロボロスと繋がっているが故に、彼女を殺せば同時に世界は滅ぶ。かといって生きたまま生け捕りにするにもリスクは高い。 彼女自身の危険な能力もさることながら、仲間たちの団結が最も脅威だ。 そこで余は彼らと協力する名目で、大いなる秘術を目指す」 あまりの発言に神仏像は呆然とする。 誰もが開いた口が塞がらない。 ホーディアは憮然とした表情でホワイトサタンを睨む。 「ちょっと待ってくれ! いくらなんでも行き成り過ぎだ!」 「そうだそうだ!」 「頭おかしくなったんですか? そもそも敵が「はい」って承諾すると思ってんのかよっ!?」 不服を申し立てるように民衆が騒ぎ立て始めた。 (クククッ。中庸が故に、色々と難儀なもので) アクシャカは含み笑いし、面白そうにその様子を見物。 「不服なら、余に挑め!」 畏怖させるほどの威圧が膨らむ。民衆も流石に口を閉ざす。 「…皆が不本意なのは分かるが、これが確実なやり方だ。余には『世界と闘う』目的がある。 それ故に、うに魔女…アリスとの決着は大いなる秘術の手前でつけておきたい!」 もちろん、これにも意味があった。 アリスが大いなる秘術に辿り着く前に破れるような事があれば、こちらも一緒に終わるだろう。 だが、倒してからすぐに大いなる秘術を手に入れれば無事に済む可能性が高い。 しかしホワイトサタンはどこか納得が行かない表情を浮かべる。
「ひょっとして、ホワイトサタン様は…うに魔女の事が好きだったりしねぇですかい?」 そのタージュ・ビスの空気を読まない一言で一同は硬直。 思わずホワイトサタンは口を開け、年甲斐もなく鼻上辺りを赤らめさせた。 「ち、違う! あいつは余の最大の敵だ!! いつしかこの手で引き裂いてくれるわ!!!」 否定するべき、怒りのままに突き出した拳を握り締めて見せる。 「へぇ…、それはすんませんでした」 タージュ・ビスは思惑が外れたと思い、申し訳なく後頭部を掻きながら、引き下がった。 他の天使精鋭隊の何人かが「よく言った!」とばかりに彼の肩や背中を叩いた。 その意図が分からず、タージュ・ビスは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔を見せる。
(こ、こやつ! うに魔女の事をマジで好きなのかよ…!!) 白目のまま、民衆の一同は唖然と硬直するままだった。 「そ、そのなんだ。余は…神人類を統括する王だからな。私情で余はゆ、揺るがん!!」 胸を張り、威風堂々と宣言してみる。しかし赤面、頭上からは湯気が立ち昇っていた。 しかし民衆の誰もが微笑ましいと、ニヤニヤしながらホワイトサタンを眺めていた。 本当の事を言うのは流石に怖いのか、野暮なのか、誰も口に出さなかった。 「うに魔女…、絶対にシトメル…!」 ただ、クリコは恨みがましい表情で俯く。 アクシャカはそんな喧騒を楽しそうに含み笑いを続ける。卑しそうに目が吊り上げられる。 そして闇に溶け込んで姿を消す。 「これがツンデレって奴かいな。リアルで見たわ」 憮然とホーディアは口を窄めて見せた。
あとがき
ツンデレ属性のラスボスw そもそもラスボスに定義していいキャラなのか判断しかねるけどネw むしろアリエナーとそのバックの人がラスボスっぽい雰囲気ですがネw 少しずつ、ラストストーリーに輪郭が見えてきたので設定は急に変わるとかはないっスw
この話。何度も修正しまくりました。 敵側の事情なので真面目な雰囲気にしがちで地味になりがちだったので、苦戦しました。 こういう新鮮な感情を抱くラスボスもいてもいいかなって事でツンデレさせてみたw 元々、彼はクレインの息子。母の腹の中にいた時に、伏線としてうに魔女の音色を聞いていたので唐突じゃないはずw
実は「ある事が抜けている」ことでラブフラグが立ってない事を彼は知るよししないけど、これもラストで明らかに――w
うにうにw
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| 旧・セリアの伝説 | 2009,6,2 |
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BLを全く知らず、エロも詳しくなかった頃に描いた自作漫画の部分を掲載しますーw ヒトデにフルボッコにされると言うシーンw 篤と御覧あれw (画像をクリックするとページが進むよw) テラヒトデw 難易度高過ぎw |
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| リンク | 2009,6,1 |
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